「中古マンションの価格が気になる」「購入費用を抑えて家を購入したい」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。新築よりも購入時の費用が抑えられて、立地や部屋の広さなどの条件が良い物件をお探しの方もいらっしゃると思います。
中古マンションの価格は購入するタイミングによって変動するので、価格を決定する要因を知ることが重要です。希望するマンションの条件やお住まいの地域によって中古マンションの価格は大きく異なります。
この記事では、中古マンションの価格が変動する理由や現在の状況を解説していきます。中古マンションを購入すべきタイミングを知りたい方や今後の予想される動きについて興味がある方の参考になると思いますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
中古マンションの価格が上昇傾向にある理由3つ
中古マンションの価格は都市部を中心に高騰が続いている状況です。社会情勢や国の制度の影響を受けやすいことも原因として考えられます。
レインズ(東日本不動産流通機構)が発表している首都圏不動産流通市場の動向によると、首都圏中古マンション平均価格は年々上昇傾向にあり、2023年の平均価格は4,575万円で前年比7.0%上昇しました。
成約件数や新規登録件数も前年度比で増加しており、中古マンションの需要が高まっていることを表しています。
中古マンションの立地や築年数などの条件によっても価格は異なります。住宅の価格は年々上昇傾向にありますが、主な理由として考えられる3つをここでは解説していきます。
参考(東日本不動産流通機構): レインズとは?
新築物件の代替需要が生じているから
近年では中古マンションを購入する人が増加傾向にあります。その理由は、新築物件を購入する代替案として中古マンションを選ぶ人が増えているからです。
新築マンション | |
メリット | デメリット |
・最新の設備を備えている ・修繕するリスクが少ない ・耐震性がある ・防犯面に優れている ・住宅ローンが利用しやすい | ・中古に比べて価格が高い ・実物が見られない場合がある ・資産価値が下がりやすい |
中古マンション | |
メリット | デメリット |
・新築に比べて安く購入できる ・希望のエリアで見つけやすい ・リフォームで自分の好みの空間が作れる ・実物を見てから購入できる | ・設備の交換やリフォームの費用がかかる ・耐震性や断熱性が新築よりも低い ・建物が老朽化している場合がある ・修繕積立金が高くなりやすい |
新築マンションは、建物の共用部分から専有部分まですべてが新しい状態で、最新の設備を備えているなどメリットが多くありますが、中古マンションよりも割高です。
中古物件のメリットは、新築マンションよりも価格が安いだけでなく、エリアや部屋の広さなど希望の条件で物件を見つけやすいことも挙げられます。新築・中古のマンションの平均価格が年々上昇しており、費用面で中古マンションを選ぶ人が増加したことから代替需要が生じました。
投資用物件として注目を集めているから
投資用として中古マンションを購入することが近年注目されています。ほかの金融商品よりも利回りが高いことや新築マンションよりも価格が安いことが理由です。
中古マンションは、入居者層や入居率などの入居実績が判明しているためデータを確認した上で購入することが可能です。競合物件や入居者間のトラブルの有無を確認した上で、実績のある中古マンションを検討できる点もメリットといえます。
投資用物件として購入される中古マンションの需要が高くなり、価格が上昇している理由の一つとして考えられます。海外投資家からも日本の不動産が注目されていることや老後の資産形成を行う選択肢の一つとしても中古マンションの投資が人気を集めています。
低金利の住宅ローンを利用する人が多いから
日本銀行の金融政策の一つとして行われている金融緩和の継続により、低金利の住宅ローンが利用できることから中古マンションを購入する人が増えています。
低金利の住宅ローンが利用できることのメリットは、長期間のローンが組みやすくなることです。
民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供するフラット35では、最長35年で全期間固定金利の住宅ローンが利用できます。新築住宅だけでなく、要件を満たす中古住宅も利用可能です。
借入金利が低いタイミングで住宅を購入する人が多いことから、家の価値が上がり中古マンションの価格も上昇しました。低金利の政策が終わると住宅の買い控えが起きる可能性があり、住宅そのものの価格が低下することも予想されます。
参考(住宅金融支援機構):【フラット35】
中古マンションの価格を決定する主な3つの要素
中古マンションの価格は一定ではなく、日々変動しています。
価格を決定する要素は、社会情勢や国の方針によっても変動しますが、ここでは主な3つの要素について解説していきます。
築年数の長さ
築年数が浅い物件ほど建物の価格は高く、建てられてから年数が経過するとともに価格が低下していきます。
築20年以降の物件の価格は横ばいになる傾向があり、新規登録や成約した件数が多い物件は築年数20年前後のものが多いです。
レインズ(東日本不動産流通機構)が発表している首都圏不動産流通市場の動向によると、2023年に新規登録された中古マンションの平均築年数は29.41年で、成約した中古マンションの平均築年数は23.83年でした。
市場の傾向から見てもわかる通り、築20年以降は価格が下げ止まりすることから需要が高くなります。2018年以降は築浅の中古物件が新築物件よりも成約時の価格が上がった事例もあり、新築物件の供給が減少したことも原因の一つとして考えられます。築年数によって価格が変動することを念頭に置いて中古マンションの購入を検討しましょう。
専有面積の広さ
中古マンションは、部屋の間取りと専有面積も価格を決定する要素になります。部屋の広さや日当たりのよさなど、同じ建物内であっても価格が変動する点が特徴です。
マンションなどの集合住宅においては、居住する人が共同して利用する共有部分と、各部屋の住人が所有する専有部分に分かれます。
区分 | |
専有部分 | 共有部分 |
居室の内部(壁紙、床、天井、室内のドア等) | エントランス、廊下、ベランダ、非常階段、屋上、エレベーター、宅配ボックス、配管、ごみ置き場、管理人室、躯体等 |
特徴 | |
・区分所有者が単独で所有するエリア ・構造上および利用上において独立している必要がある | ・居住者全員が共有するエリア ・修繕費用を管理組合が負担する(過失による専有使用部分の故障は自己負担) |
共有部分には、エントランスやバルコニーの他に駐車場などが含まれます。修繕や改修を行う際の制限があることが特徴です。
専有部分には、室内の床や壁、天井などが含まれます。部屋ごとにあるベランダやバルコニーは共有部分に該当する点に注意が必要です。
中古マンションの価格を比較する際は、住みやすさや部屋のレイアウトをイメージしながら間取りを確認しましょう。また、共有部分と専有部分の違いを理解することで、実生活で利用できる部屋の広さを把握ができます。
立地条件
立地条件とは、物件を買う人や借りる人が物件の場所や周辺環境に求める要素のことで、立地に必要な自然的および社会的条件のことをいいます。
新築・中古に関わらずマンションの価格は、築年数や部屋の広さだけでなく物件の立地条件によっても異なります。公共交通機関へのアクセスがスムーズで、通勤や通学時の交通利便性が高い物件は利便性が良いといえるでしょう。スーパーマーケットや病院、銀行などの生活に必要な周辺施設が充実していることも立地条件に含まれます。
立地条件を考える上で大切なことは、長期的な視野を持つことです。現在の物件の周辺環境だけでなく、人口の増減や都市の発展など将来的に街全体がどう変化しているかを予想した上で、中古マンションの購入を検討しましょう。
中古マンションを買うべきタイミング
中古マンションは、社会情勢や国の制度による価格の変動とご自身のライフプランに合わせたタイミングで購入するのがベストです。
マンションや戸建てに関わらず、住宅を購入する基準は物件の価格や金利によって決定します。日本銀行の金融政策により低金利の住宅ローン「フラット35」が提供されるなど、現在は長期の固定金利を利用したい人向けの制度が充実しています。
市場の動向などの外的要因だけでなく、自身や世帯の収入などを把握した上で中古マンションを買う必要があり、物件の購入を検討している人が実際にどのタイミングで買うべきかを詳しく解説していきます。
参考(住宅金融支援機構):ずっと固定金利の安心【フラット35】
価格相場が下がる時期
中古マンションの価格相場は、新築マンションの価格の上昇に伴い高騰が続いている状況です。価格相場が下がるのは、住宅ローンの金利が上昇する時期やマンションの契約件数が減少するタイミングです。
レインズ(東日本不動産流通機構)によると、2013年1月~2023年12月の首都圏中古マンションの平均成約単価は上昇し続けています。世界の紛争が続いたことや日本のインフレ、円安による影響で建築資材費や人件費が高騰し、新築マンションの価格が上昇するとともに中古マンションの需要も拡大しました。
加えて、低金利の住宅ローンが利用できることで、高額の物件が購入されたことも価格相場の上昇に繋がりました。首都圏中古マンション新規登録単価も2013年から高騰が続いており、都心部の人口集中や海外の投資家の増加などが原因として考えられます。
今後の動きとして予想されるのは、日本銀行のマイナス金利政策の解除に伴う住宅ローンの金利の上昇です。日本銀行は2024年3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決定しました。金融緩和政策の変更に伴い、住宅ローンの金利が上昇する可能性があります。金利が高くなることでマンションの買い控えが起こり、売買成約数が減少するとマンション価格が下がることも予想されます。
住宅ローンの金利が上昇する時期は、新築・中古に関わらずマンションを含む住宅の価格が下降する可能性が高いといえます。低金利のローンで価格が高めのマンションを購入するか、高金利のローンで価格が下がったマンションを購入するかは自身のライフプランに合わせて選択しましょう。
参考(東日本不動産流通機構):首都圏中古マンション・中古戸建住宅長期動向グラフ【2013年1月~2023年12月】
参考(首相官邸):日本銀行のマイナス金利政策解除等についての会見
ライフステージが変化する時期
中古マンションを買うべきタイミングの一つに、ライフステージの変化があります。結婚や出産などの家族が増える場面で、これまで生活していた家よりも利便性が良く、住み心地の良い家の購入を検討する人も多いのではないでしょうか。
子供の成長を予想して家を購入することを検討している人は、将来的に子供部屋を与えるなどの生活の変化をイメージした上で間取りを選ぶ必要があります。また、新築よりも物件の選択肢が多いことや購入費用を抑えられる点もメリットです。
中古マンションの購入後にかかる修繕積立金や設備の交換の費用など、賃貸や新築とは異なる場面も想定しておくことが重要です。人生において重要な選択の一つともいえる住宅を購入する場面は、ライフステージが変化するタイミングに向いています。中古マンションの購入においても住宅ローンを組むことは可能なので、ご自身や家族のライフスタイル、予算に合わせて計画を立てましょう。
また、国土交通省は不動産価格指数を公表しており、土地や戸建て住宅、マンションなどの不動産の取引価格をもとに不動産価格の動向を数値化しています。
地方別で不動産価格指数のデータが公表されているので、お住まいの地域の価格がどのように変動しているかを確認することができます。家族で一緒に暮らす中古マンションを購入する場所やタイミングを検討している人は、価格の動きを見る際の参考のデータになるでしょう。
参考(国土交通省):不動産価格指数
閑散期のタイミング
不動産業界における閑散期は、7月から8月といわれており、繁忙期は1月から3月といわれています。
3月から4月の卒業や入学、就職等で1月から3月に物件を探す人が集中するからです。
繁忙期と呼ばれるこの時期に中古マンションを探すことで、物件の数が多いことから希望する家が見つかることもあるでしょう。一方で、不動産業者と価格交渉を行うことが難しく、他の物件を探す人と競争して家を購入する必要があります。
引っ越しシーズンに合わせて数多くの物件から希望する家を探したいという方は繁忙期(1月から3月)に探すのも選択肢の一つです。閑散期のタイミングに合わせて購入することで、ゆっくりと時間をかけて物件を選ぶことができ、キャンペーンなどを利用することで費用を抑えてマンションを購入することが可能です。中古マンションの購入は、人生における大きな決断になるので、時間をかけて物件を探したい方や購入を迷っている段階の方は、閑散期(7月から8月)に購入を考えるのがおすすめです。
今後の中古マンションの価格
今後の中古マンションの価格は、都市と地方で二極化することが予想されます。
人口集中が進む都市部や再開発エリアでは、中古マンションを含む住宅の需要が今後さらに高まるでしょう。人口が増加する都市は新築マンションや戸建て住宅が建設されるので、同時に中古マンションの価格も上昇します。
一方で、少子高齢化が進む地域や都市へ人口が流出している地域は、将来的に住宅の価格が下降することが予想されます。築年数の古い物件が増加すると、住宅そのものの価値が低下するので在庫数が増える傾向にあるからです。
コロナ禍が明けてきたことでインバウンド需要が拡大し、海外投資家による投資用マンションの購入も増えています。物件については新築や築浅の物件が売れる傾向にあり、将来的には築年数の古い物件が増加することも予想されます。物件のリフォームやリノベーションにより改修を加えることで、住宅の価値を高めていくことも今後の課題です。
さいごに
全体的に中古マンションの価格は上昇傾向にありますが、今後予想される価格の動きは変動する可能性が充分にあります。時代の変化に対応するためにも、中古マンションの価格を決定する要因や傾向を知っておきましょう。
不動産業界全体の流れや新築マンションの価格が中古マンションの価格に与える影響も多いので、新築・中古のどちらの物件を購入するか迷っている方も調べておくメリットがあります。
ライフイベントの変化や投資など中古マンションを購入する目的に合わせて、築年数や立地条件など希望の条件に合った物件を選択しましょう。
<保有資格>
司法書士
宅地建物取引士
貸金業取扱主任者 /
24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。