不動産売却で起こりやすいトラブルとは?3つのケースごとの対処法を解説

不動産を知りたい

「所有しているマンションを売却したいけど、万が一のトラブルが怖い」「不動産売却でトラブルになったときの対処法を知りたい」など、不動産の売却におけるトラブルが気になって売却に一歩踏み出せないといった人も多いのではないでしょうか。

不動産を売却するのが人生で初めてという人がほとんどだと思います。実際に所有する建物や土地を売る場面では、専門知識も必要になるので不動産会社に依頼するのが一般的です。

しかし、不動産会社に依頼した場合でも不動産を売却するに当たっては様々なトラブルが生じる可能性があります。
不動産の売却で失敗しないためにも、事前にどういったトラブルがあるのかを確認しておくことが重要です。

不動産の売却におけるトラブルの対象は不動産会社や買主ですが、トラブルの種類は大きく分けて契約、金銭、物件の3つに分かれます。

今回の記事でご紹介するトラブルとその対処法を確認しておけば、自分が売却する不動産にはどういったトラブルが発生するかを事前に想定することができるので、実際にトラブルが起こっても焦らずに対処できます。
これから不動産の売却をしたい人や売却する際には、どういったトラブルがあるのかを知っておきたいという人は最後まで読んでいただければと思います。

不動産売却におけるトラブル

不動産売却時に発生するトラブルがどういった状況で起こるのかを知っておくことが重要です。

トラブルの対象は誰であり、どんな種類のトラブルがあるのかを確認しておく必要があります。
ここでは、不動産売却におけるトラブルの対象者とトラブルの種類について解説します。

トラブルの対象は「不動産会社」と「買主」の二種類

不動産売却における主なトラブルの対象は、不動産会社と買主です。

家の売買におけるトラブルは、主に売買の仲介をしてくれる「不動産会社」と、家を買う「買主」との間に起きることが多い傾向にあります。

そのため、売買を仲介してくれる不動産会社選びが非常に重要です。

不動産会社は、自社で買主を探す両手取引をする会社、レインズに情報を掲載して買主は他の不動産会社に探してもらう片手取引をする会社に分かれます。

両手取引をする会社は囲い込みをするケースも考えられます。

買主については、不動産会社に聞かないと年齢や職業など不動産会社から情報を提供してくれないケースが多いです。
買主の年収が低いとローンが通らないケースも考えられるので、年齢や職業、年収、家族構成といった点については事前に確認しておくほうが良いでしょう。

トラブルは主に「契約」「金銭」「物件」についての3つに分かれる

不動産の売却におけるトラブルの種類は、「契約」「金銭」「物件」の3つに分かれます。

不動産会社で多いのが契約、金銭のトラブルです。
特に媒介契約の際の仲介手数料や広告料などの請求については注意しましょう。

物件のトラブルについては、不動産会社が用意する設備表や物件状況等報告書をきちんと確認することである程度は回避できます。

クーラーや食器棚、ベランダの植木といった家具や家電は、基本的には売主がすべて撤去する必要があります。
残したい場合は契約前に買主に必ず相談しましょう。


物件のトラブルはお金で解決できるケースが多いですが、契約や金銭のトラブルは契約解除や損害賠償を請求されるといったケースもあるので注意が必要です。

契約に関するトラブルと対処法

不動産の売却をする際の契約は、主に不動産会社との媒介契約と買主との売買契約の2種類です。

他にも買取を希望する場合は買取会社との売買契約などがあります。
いずれの契約を行う場合も事前に契約に関する取り決めをきちんと行っておくことが重要です。
ここでは、契約に関するトラブルと対処法について解説します。

媒介契約した不動産会社に囲い込みされる

不動産会社との媒介契約でトラブルになりやすいのが不動産会社による囲い込みです。

不動産を売却する場合、一般的には不動産会社に売却を依頼する媒介契約を結びます。
売契契約には一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があります。

依頼できる不動産会社レインズへの登録義務
一般媒介何社でもOKなし
専任媒介1社のみ契約後7営業日以内
専属専任媒介1社のみ契約後5営業日以内

中でも1社の不動産会社と契約する専任媒介契約を選択する方が多いかと思います。

専任媒介契約をすると不動産会社の多くは、自社で買主を探します。
なぜなら、自社で買主を探せば買主から仲介手数料をもらえるからです。
売主、買主双方から仲介手数料をもらうことを両手取引といいます。

本来であれば、不動産会社は専任媒介契約を締結するとレインズ(不動産流通機構)に物件情報を登録し、他の不動産会社に情報を開示する必要があり、開示された情報を元に他の不動産会社は顧客に物件を探すことができます。

しかし、他の不動産会社に顧客を探されると自社の仲介手数料は半分(片手取引)になってしまいます。
そのため、両手取引を狙う不動産会社は、「担当が不在でわからない」「買主が決まっていないにもかかわらず、すでに買主が決まっている」などと言って出来るだけ他社が紹介できないように囲い込みを行うというわけです。

囲い込みをされると内覧希望者は物件を見られないということで他の物件に流れてしまい、機会損失が多くなってしまうので売却が長期化します。

【対処法】
最近では片手取引を前面に押し出した不動産会社も多いので、「不動産会社 片手取引」といったキーワードで検索して選ぶと良いでしょう。
又、媒介契約時に必ず他社にも広告掲載できるように依頼するのもひとつの方法です。

両手取引を狙う不動産会社はレインズ掲載時に他社の広告掲載は不可にするので、それを広告掲載可にしてもらうだけでも囲い込みを減らすことができます。

ただし、不動産会社が広告掲載できるようにしますと言っても、売主は確認する方法がないのでポータルサイトなどに広告掲載が少ない場合は媒介契約の解除も検討する必要があります。

違法な取引を行う不動産会社は口コミサイトなどで悪い評判を書き込みされていることが多いので、不動産会社を決める際には必ず口コミサイトの書き込みを確認しましょう。

買主から契約解除される

不動産の売買においては、売買契約後に買主から契約解除の申し出があるケースもあります。

買主が契約を解除するケースとしては、「手付解除」「ローン特約による解除」「契約不適合による解除」などがあります。

手付解除では、売買契約時に決められた金額の手付金(売買代金の5%程度)を買主が支払い、手付解除期日までであれば買主は手付金を放棄、売主は手付金を変換して同額で支払うことで売買契約の解除ができるといった条項です。

ローン特約による解除は、買主保護のための条項で売買契約締結後に一定期間(1カ月程度)で住宅ローンの本承認が取れない場合は白紙解除となる条項になります。

契約不適合による解除は、売主が売却する不動産が契約の条件を満たさない(面積が狭い、欠陥住宅で済めない)といった場合に、修補や補完をして引き渡す、売買価格の値下げ、損害賠償請求、契約の解除が行える条項です。

いずれも契約書の条項として記載されているので契約の際にはきちんと確認しておきましょう。

【対処法】
手付解除については、事前に購入意思がしっかりとしているかを確認しておくことが重要です。
一般的には売買契約の前に購入申込書をもらいますが不動産会社を通じで購入動機なども確認しておくと良いでしょう。
ローン特約による解除については、ローンの事前審査の承認がきちんと出ているかを書面でもらっておくと良いでしょう。

住宅ローンの事前審査の承認があればほとんどローンが否認されることはありませんが、フラット35は本審査で否決となることも多いので注意が必要です。
契約不適合責任については、大きなトラブルに発展するケースも多々あります。

売却に際して気になる点があれば物件状況等報告書などに記載してもらい、不動産会社を通じて説明してもらいましょう。

金銭に関するトラブルと対処法

不動産の売却における金銭トラブルは多岐に渡ります。

不動産の売買では大きなお金が動きますので、媒介契約、媒介契約をする前に契約内容についてはきちんと確認しておくことが重要です。
ここでは、金銭に関するトラブルと対処法について解説します。

仲介の不動産会社に法外な金額の仲介手数料を要求される

不動産会社によっては法外な金額の仲介手数料を要求されるケースもあります。

仲介手数料は、法律で以下の表のとおりに上限が決められています。

売り出し価格上限
200万円以下売却価格の5%+(消費税)
200万円を超えて400万円以下売却価格の4%+20,000円+(消費税)
400万円を超える売却価格の3%+60,000円+(消費税)

不動産会社がこの計算式を超えて仲介手数料を請求するのは違法です。
もし、請求されるようなことがあれば契約はしないほうが良いでしょう。

【対処法】
仲介手数料に関しては、事前に上記で紹介した表を参考に、提示された金額が上限を超えていないかを確認しましょう。

提示された買い取り金額が相場よりも低い

査定を依頼する買い取り業者が少ないと相場よりも低い金額を提示されるケースがあります。

買い取り業者は、購入した物件を転売して儲けを出します。
そのため、少しでも安く購入したいので、競合相手がいないということがわかれば相場よりも低い金額で
買い取り金額を提示してくることが多いです。

【対処法】
買い取り査定を依頼する場合は、最低でも3社は依頼するようにしましょう。
複数社依頼することで、相場を把握できる、競争させて高い金額を提示してもらえるといったメリットがあります。

仲介依頼をしている不動産会社から広告料を請求される

不動産会社によっては仲介手数料以外に広告料を請求されるケースがあります。

媒介契約を結ぶと不動産会社は、自社ホームページやポータルサイトといったインターネットへの広告や販売図面を作成してレインズに掲載するといった販売活動を行って集客を行います。

こういった広告にかかる費用は、不動産会社へ支払う仲介手数料に含まれており、仲介手数料以外の報酬を請求するのは違法です。

【対処法】
不動産の媒介契約を締結する際に、仲介手数料以外の報酬の請求がないかを確認しましょう。

売却後買主から支払いがない

不動産の売却後に買主から売買代金の支払いがないといったケースも考えられます。

不動産の売却においては、買主が売買代金を支払わないと不動産の引き渡しができません。
「突然病気で対応ができない」ということであれば期間を延ばせば対応できますが、「お金が準備できない」といった理由だと大変です。
まずは、買主がなぜ売買代金の支払いができないかを確認しましょう。

【対処法】
一般的には、売買契約書に決められた引渡し期日までに売買代金を振り込まないといけないということが明記されています。
買主が支払わない場合は、買主に書面等で支払いの催告をし、それでも支払わない場合は契約の解除と違約金の請求ができます。

重要事項の不告知によって損害賠償を請求される

不動産を売却する際には、売主には購入に影響する重要な事項を告知する義務があります。

室内で事故があったといった心理的瑕疵や、隣人が毎日夫婦喧嘩をしてうるさいといった環境的瑕疵、雨漏りがするなどの物理的瑕疵、建ぺい率・容積率オーバーしているといった法的瑕疵なども告知事項です。

重要事項の不告知によって、生活や資産価値に大きく影響を与える場合は損害賠償を請求されるケースもあります。

【対処法】
告知事項の内容については判断が難しいものも多いです。
少しでも気になる点があれば不動産会社に相談し、設備表や物件状況報告書に記載してもらいましょう。

物件に関するトラブルと対処法

不動産の売却において最も多いのが物件に関するトラブルです。

物件に関するトラブルは、事前に確認しておくことで回避できるケースが多々あります。
ここでは、物件に関するトラブルと対処法について解説します。

建物の不具合や故障など瑕疵(かし)がある

物件のトラブルで多いのが建物の不具合や故障など瑕疵(かし)があるケースです。

瑕疵とは目に見えない不具合のことで、売主は引渡し後に使った場合は修補(修理)する義務があります。

設備については引渡しから7日間、契約不適合責任において給水管の故障、シロアリの害、雨漏りは3カ月間のうちに見つかったものについては売主が修補(修理)しないといけないのが一般的です。

【対処法】
売買契約の条項に特約として、設備の修補請求、契約不適合責任を免責とする条項を入れてもらっておけば引渡し後の故障といったトラブルは回避できます。

ただし、買主にとっては不利な条項になるので価格交渉されるケースも多く、免責にした方が良いかは購入申込金額を考慮しながら判断しましょう。

土地の境界線に関してのトラブル

土地の売却時に多いのが境界線、境界標に関するトラブルです。

売買契約書には、売主は残代金支払時までに土地につき現地にて境界標を指示して境界を明示する義務があります。
境界標が無い場合は、境界標を新たに設置して境界を明示しないといけません。
境界がはっきりしないと登記簿上の免責と実際の土地の面積が異なった場合にトラブルになりやすいからです。

しかし、境界標を設置するには土地家屋調査士などに依頼する必要があり、測量をして境界標を設置するとなると多額(50万円以上)の費用が必要です。
そのため、売主又は買主が測量はしなくても良いという条項を入れて契約するケースも多く、トラブルの原因となっています。

また、測量の際には隣人に立ち合ってもらって境界の確認をしてもらう必要があります。
過去に隣人とトラブルがあると協力してもらえず、境界標が設置できないということで最悪の場合は売却できないといったケースも多いです。

【対処法】
費用は掛かりますが、土地家屋調査士に依頼して隣人の立ち会いのもと行う確定測量をしておくと境界標もきちんと設置してもらえるので安心です。
又、隣人とトラブルがある場合は、売却に向けて事前に話し合いをして解決しておきましょう。

埋没物が埋まっている可能性

土地の売買で多額の費用が発生するのが埋設物の埋まっていたケースです。
埋設物には、ガラと言われるゴミなどの廃棄物が杭や井戸などがあります。

簡単に除去できるものはそれほど問題にはなりませんが、杭などの大きなものが埋まっている場合は数百万円かかります。
契約不適合責任を免責にしていても、杭などの埋設物については別途条項を決めておかないと基本的には
免責されません。

【対処法】
不安な場合は業者に依頼して埋設物の調査を行うと良いでしょう。
契約不適合責任を免責にする場合は埋設物についても免責になるような条項を入れてもらいましょう。

元の入居者の残置物

引渡し後に元の入居者の残置物に関するトラブルも多いです。

売主は、引渡しまでに家電製品や家具、植木、ゴミを処分し、不動産会社が用意する設備表に記載のある設備以外は何もない状態にして引き渡さないといけません。

家電製品や家具、植木、ゴミを処分せずにおいていた場合、残置物として処分費用を請求されるケースもあります。
特にクーラーや電灯については取り外しや処分に費用が掛かるのでトラブルになりやすいです。

【対処法】
設備表に残置物として残すかどうかを記載し、残置物としておいておく場合は、修補義務が無い旨の特約を条項に追加してもらうとよいでしょう。

管理規約の説明が不十分

マンションの売却においては管理規約の説明が不十分なせいでトラブルに発展するケースもあります。
マンションにはそれぞれ管理規約が定められており、入居者は管理規約の内容を遵守しないといけません。

管理規約の内容はマンションによって違い、変更や追加がされるケースも多いです。
通常は、不動産会社が重要事項説明の際に買主に詳しく説明してくれます。
特に、ペットの飼育や楽器の使用可否、リフォーム時のフローリングの指定については、トラブルになるケースが多いのできちんと伝えてもらいましょう。

【対処法】
お手持ちの最新の管理規約を準備しておき、マンションの総会の議事録などもあれば一緒に渡すと良いでしょう。

トラブルが起きてしまった時の窓口・相談口

不動産の売却でトラブルが起きてしまった時は、都道府県宅地建物取引業法主管課などのしかるべき機関に相談しましょう。
トラブルは発生して時間が経つほど解決が難しくなるので、トラブルが発生したらすぐに連絡することが重要です。

窓口・相談口
・都道府県宅地建物取引業法主管課
・不動産適性取引推進機構
・不動産会社が所属する業界団体(全国宅地建物取引業協会連合など)
・弁護士・司法書士・行政書士などの専門家

参考:都道府県宅地建物取引業法主管課一覧
参考:不動産適性取引推進機構
参考:業界団体

さいごに

今回は、不動産の売却に関するトラブルとその対処法について解説してきましたがいかがでしょうか。

不動産はひとつとして同じものはなく、それぞれの不動産によって条件が異なります。
プロである不動産会社でも見逃してしまうこともあり、どんなに気を付けてもトラブルは起こります。

不動産の売却においては、トラブルは起こるものと考えて取り組むことが重要です。
事前にどういったトラブルがあるのかを把握し、不動産会社と対応策を相談しながら進めることでトラブルを未然に防ぐことができます。

しかし、いくら慎重に契約を進めてもトラブルが起こってしまうことがあります。
トラブルが起こった場合は、不動産会社に協力してもらいながら解決することになりますが、どうしても解決が難しい場合はしかるべき機関や専門家に相談してください。

これから不動産を売却する予定がある、不動産の売却に関する知識が欲しいといったい人は、この記事を参考にしていただければと思います。

【監修者】大石 裕樹

【監修者】大石 裕樹

<保有資格> 司法書士 宅地建物取引主任者 貸金業取扱主任者 / 24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。

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