引っ越し退去時に掃除しないと損する?対策とトラブル回避のコツ解説

不動産を知りたい

「引っ越しの準備で忙しいのに、退去前の掃除まで必要なの?」「掃除をしなくても、ハウスクリーニングしてもらえるんじゃない?」

引っ越し時の退去で、このような疑問を持つ方は少なくありません。実際の場面では、引っ越し準備で手一杯の中、掃除まで手が回らないと感じる方も多いでしょう。

しかし、退去時に掃除をしないと、思わぬトラブルや追加費用が発生する可能性があります。
本記事では、退去時の掃除の必要性と具体的な対処法について解説します。
引っ越しの予定を控えている方はぜひ参考にしてみてください。

引っ越しの際に掃除しないまま退去するのはやめた方が良い

結論から言うと、引っ越しの退去時は掃除をしておくことをおすすめします。ハウスクリーニングが入るから掃除は不要と考えがちですが、これは大きな誤解です。

主な理由は2つあります。1つ目は、想定以上の高額な清掃費用を請求される可能性があること。2つ目は、大家さんや管理会社とのトラブルを避けるためです。

特に、水回りの日常的な掃除不足が原因の汚れが目立つ場合、標準的な退去費用の1.5〜2倍の請求を受けることもあります。
また、退去時の立ち会い検査で多くの指摘を受けると、新居への引っ越しスケジュールにも影響が出かねません。

基本的な掃除をしておくことで、スムーズな退去手続きが行えます。

退去前に掃除しておくべき理由

退去の際、「ハウスクリーニングが入るから、掃除は必要ない」と考える方も多いかもしれません。しかし、実際には掃除をせずに退去することで、予想以上の出費やトラブルが発生する可能性があります。

この項では、掃除をしておくべき主な理由を3つ解説します。
具体的にどのようなリスクがあり、どう対処すべきか順を追って確認していきましょう。

退去費用が高額になる可能性があるから

掃除をしないまま退去すると、大家さんや管理会社が専門業者を手配するフローが発生し、退去費用が高額になることがあります。

退去費用とは、原状回復費用とハウスクリーニング費用を合わせたものです。

これらの費用には入居時に支払った敷金が充てられるのが一般的ですが、キッチンの油汚れや浴室のカビなど日常的な清掃を怠った跡が顕著な場合、追加のクリーニング費用が発生することがあります。

たとえば、1Kの物件でも標準的な退去費用が3万円程度のところ、掃除を怠ると6万円以上の費用を請求されるケースもあります。

大家さんや管理会社とのトラブルを避けるため

掃除をしないまま退去すると、大家さんや管理会社との間で思わぬトラブルに発展してしまいます。

退去時の立ち会い検査では多くの指摘を受けることになり、その場で予想以上の清掃費用を請求されるケースもあるでしょう。さらに、次の入居者からクレームが入り、管理会社から追加の費用請求や指導が入ることも珍しくありません。

特に、換気扇の油汚れやお風呂場のカビなど、日常的な清掃不足が原因の汚れは問題視されやすい傾向にあります。

基本的な清掃を行い、生活感の強い汚れは可能な限り取り除いておきましょう。それが、スムーズな退去手続きへの近道となります。

退去時の原状回復義務があるから

賃貸物件の入居者には「原状回復義務」があります。これは、入居者の故意や過失によって生じた汚れや破損を入居時の状態に戻す義務のことです。

ただし、通常の使用による経年劣化は入居者の負担対象外となりますのでこの点には注意が必要です。
「原状回復義務」と「経年劣化」の違いを以下で確認しておきましょう。

【原状回復義務の対象となる例】
・日常的な掃除を怠ったことによるカビや著しい汚れ
・換気扇の油汚れ
・ペットによる傷や臭い
・壁紙のヤニ汚れ

【経年劣化の例(入居者負担外)】
・日照による壁紙の色あせ
・家具の設置跡
・通常使用による設備の劣化
・畳の自然なへたり

原状回復義務の対象となる汚れについては、できる限り対処しておくことをおすすめします。

賃貸物件の退去費用の相場

退去費用の相場は物件の広さや地域によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

間取り退去費用の相場(目安)
ワンルーム・1K2〜3万円
1DK・1LDK3〜5万円
2DK・2LDK5〜8万円
3DK・3LDK7〜11万円

これらの費用には、基本的なハウスクリーニング代や設備のチェック費用が含まれます。

ただし、以下のような場合は追加費用が発生しやすくなるので注意が必要です。

・換気扇やコンロ周りの油汚れがひどい
・水回りの頑固なカビや水あかが目立つ
・壁紙の著しい汚れや破損
・ペットの飼育跡がある

上記のような状況の場合、退去費用が相場の2倍程度まで跳ね上がることがあります。
退去費用を抑えるためには、日頃からの清掃を心がけることが大切です。

退去前に掃除しておくべき7つの場所

退去前の掃除で特に注意が必要な場所は7つあります。

これらの場所は、退去時の立ち会い検査で重点的にチェックされ、汚れが残っていると追加のクリーニング費用が発生する要因となります。

基本的に、床や壁といった広範囲の場所や換気扇やガスコンロなどの設備類、そして水回なりなどの汚れです。

この項では、7つの場所それぞれについて、効率的な掃除方法とポイントをご紹介します。
掃除の手順さえ押さえておけば、特別な道具や洗剤がなくても十分な効果が得られるはずです。


床の掃除は、まず掃除機で丁寧にホコリや髪の毛を取り除くところから始めます。
特に家具の下や部屋の隅は汚れがたまりやすいため、入念にチェックしましょう。

その後、フローリングワイパーや雑巾で水拭きを行い、最後にから拭きで仕上げることで、きれいな状態に保てます。

壁や窓


壁は中性洗剤を薄めた水で軽く拭き取ることをおすすめします。
力を入れすぎると壁紙が傷む可能性があるので、優しく拭きましょう。

窓は結露による汚れが気になるところ。ガラスクリーナーを使用し、サッシの溝まで丁寧に清掃することで、見違えるほどきれいになります。

換気扇・レンジフード


換気扇は油汚れが最も気になる場所です。
専用の洗剤を使って、フィルターやカバーを外して洗浄します。プロペラ部分も忘れずに清掃しましょう。

頑固な汚れの場合は、重曹水やアルカリ性洗剤で30分ほどつけ置き洗いをすることで、効果的に落とせます。

ガスコンロ


ガスコンロは日常的に使用する場所だけに、油汚れや焦げ付きが目立ちます。
五徳(ごとく)は取り外して洗浄し、コンロ本体は専用クリーナーで丁寧に拭き取ります。

バーナーの周りや天板の隙間にも注意を払い、清掃していきましょう。

風呂


浴室は水あかとカビが主な課題です。
浴槽や壁面は専用洗剤で洗い、特にカビは市販のカビ取り剤を使って完全に除去します。

排水口の髪の毛や汚れも見落としがちですが、しっかりと取り除きましょう。鏡の水あかは、クエン酸や酢を使うことで効果的に落とせます。

トイレ


トイレは衛生面で特に注意が必要です。便器は専用洗剤で内外をしっかり洗浄し、床や壁も拭き掃除を行います。
便器と床の境目やタンクの背面など、普段目につきにくい場所も忘れずに清掃しましょう。換気扇のホコリも取り除いておくと良いでしょう。

ベランダ


ベランダは室外とはいえ、しっかりとした清掃が必要です。
まず落ち葉やゴミを掃き出し、排水溝の詰まりを確認します。手すりや床面に付着したカビやコケはデッキブラシでこすり落とし、最後に水で流して仕上げましょう。

雨の跡が残りやすい場所なので、天気の良い日に掃除することをおすすめします。

退去費用を高額請求されたときの対処法

退去時に予想以上の高額な請求を受けた場合でも、あわてる必要はありません。適切な対応手順を踏めば、交渉の余地は十分にあります。

まずは冷静に、ご自身の契約内容を確認することから始めましょう。その上で、管理会社や大家さんとの話し合いを行い、それでも解決が難しい場合は専門機関への相談という段階を踏んでいきます。

この項では、具体的な対処法について順を追って解説していきます。

賃貸借契約書の内容を確認する

まず、契約書に記載されている原状回復の範囲や特約事項を確認しましょう。特に以下の点に注意が必要です。

・クリーニング費用の負担区分
・経年劣化の取り扱い
・原状回復の範囲
・特約事項の有無

特に注意が必要なのは「特約事項」の欄です。たとえば、「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」「畳の表替え費用は入居者負担」といった特約がある場合、その費用は正当な請求となる可能性が高くなります。

不明な点がある場合は、契約時の重要事項説明書や管理規約などもあわせて確認しましょう。これらの書類をしっかりと把握することが、適切な交渉の第一歩となります。

管理会社や大家さんに交渉する

高額な請求を受けた場合、まずは管理会社や大家さんとの話し合いを試みましょう。感情的にならず、冷静に交渉することが重要です。

【交渉の基本手順】
①請求内容の詳細説明を依頼する
・清掃箇所ごとの費用内訳
・具体的な補修・修繕内容
・見積書の提示を要求

②経年劣化との区別を確認
・通常使用による劣化は貸主負担であることを確認
・入居時の写真や動画があれば提示

③必ず文書やメールで記録を残す
・電話での会話は後日メールで内容を確認
・複数の業者の見積もりを比較材料として用意

交渉の結果、金額の見直しに応じてくれるケースも多いので、根気強く話し合いを続けることが大切です。ただし、交渉が難しい場合は、消費者センター(消費者庁)への相談も検討しましょう。

消費者センターに相談する

管理会社や大家さんとの交渉が難航した場合は、消費者センターへの相談が有効な解決策となります。
賃貸トラブルの専門家が常駐しており、無料で相談できるのが特徴です。

【相談時に必要な準備物】
・賃貸借契約書のコピー
・退去時の立会い調書
・請求書や見積書
・やり取りの記録や写真

消費者センターでは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて、請求金額の妥当性を判断してくれます。
また、過去の類似事例を基に、具体的な交渉方法についてもアドバイスを得られるでしょう。
相談は平日であれば全国の消費者センターで、土日祝日は消費者ホットライン(188)が利用可能です。ここでの助言を参考に再度交渉することで、多くの場合は適切な解決に至ります。

参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(国土交通省)
参考:消費者ホットライン(消費者庁)

まとめ

本記事では、引っ越しの退去時に掃除をしないとどうなるのか、また、どのように対処すべきかについて解説してきました。ポイントを簡単にまとめておきます。

・退去時の掃除は、追加費用やトラブル防止のために必要不可欠
・掃除をしないと、標準的な退去費用の1.5〜2倍の請求を受ける可能性がある
・特に水回りや換気扇など、生活感の強い場所は重点的な清掃が重要
・高額請求された場合は、契約書の確認から始めて段階的に対応を進める

掃除をせずに退去すると、以下のようなリスクがあります。

・高額な清掃費用の請求
・大家や管理会社とのトラブル
・敷金の返還額減少

退去時の掃除は煩わしく感じるかもしれませんが、将来的なトラブル防止と円滑な引っ越しのためにできる範囲で取り組むことが大切です。時間がない場合は重要箇所に絞って効率的に掃除を行うことをおすすめします。
また、必要に応じて専門業者への依頼も検討しましょう。

不安な点がある場合は、早めに管理会社に相談することをおすすめします。

【監修者】大石 裕樹

【監修者】大石 裕樹

<保有資格> 司法書士 宅地建物取引士 貸金業取扱主任者 / 24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。

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