ピロティとは?開放的なスペースの有効活用法とともに注意点を解説

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「ピロティがある建物に憧れているけれど、耐震性が気になる」「天候に左右されない庭のように使えるスペースが欲しい」など、壁がなく開放感のあるピロティに関心を持っている方もいらっしゃるでしょう。

多目的テラス・庭の確保として自由なプライベート空間が実現できる反面、柱だけで上の階を支えることから、耐震性が弱くなりがちな部分があります。

この記事では、ピロティ構造の特徴やメリット・デメリット、活用方法について解説します。

ピロティのある建物に興味のある人は、この記事を参考にデメリットもしっかり把握したうえで、検討してみてください。

ピロティとは「2階以上の建物の1階部分を柱だけで支える空間」を指す

ピロティ構造の例

ピロティとはフランス語でPilotis(杭)を表す言葉で、一般的には、マンションやオフィスビルなどで多くみられます。

建築用語としては、一般的に「2階以上の建物を柱だけで支えた1階部分にある吹き放しの空間」をさします。

建物全体が浮いているような印象を与えるため、外観からは圧迫感を感じず、デザイン性が高い建築物です。

ピロティ構造はフランスで活躍した建築家ル・コルビュジエが発明したものといわれ、日本では、江戸東京博物館(1992年竣工)や神奈川県庁東館、広島平和記念資料館(1955年竣工)などが有名です。

この項では、ピロティの特徴について解説します。

ピロティは駐車場や倉庫として利用されることが多い

ピロティ構造の住宅では、1階部分を駐車場や倉庫として利用する場合が多くあります。

都市部の住宅街では、駐車場の確保が困難な場合もあります。
しかし、2階部分が屋根となり、ビルトインガレージのように利用できるピロティは、愛車を保管するのにも大変便利です。

雨の日でも濡れずに車から乗り降りできるといった点もメリットでしょう。

また、ピロティは倉庫としても活用されます。
倉庫として利用する際、壁などがあると床面積として参入されてしまいますが(床面積については次項で説明します)、ガーデニングの道具や子どもの水遊び道具など、物を置くスペースとして利用できます。

建築基準法上でピロティは床面積に算入しない

建築基準法上において、ピロティは床面積に算入されません。

開け放たれた空間で、通行のためや駐車場として使うのであれば、床面積としてカウントされないのです。

ただし「十分に外気に開放されている」かつ「屋内的用途に供しない部分」といった2つの条件を満たしていない場合には、ピロティも床面積に含まれます。(ピロティに係る建築基準法上の床面積の取扱いについて)

なお、ピロティが屋内的用途に供するか否かについては、想定される使用状況など個々の計画内容に応じて判断されます。
事前に指定確認検査機関などの判断を確認することが重要になるでしょう。

また、床面積は、土地に対して許可される建物の床面積の割合である容積率(※)にも関わってきます。

ピロティ構造を取り入れると「容積率により制限される床面積」に該当しないスペースがつくれるため、空間にゆとりのある家を建てられるでしょう。

※容積率:敷地面積(土地の面積)に対する延べ床面積(各階の床面積の合計)の割合。定められた容積率を超える建物は建築できない。

参考:床面積の算定方法について(国土交通省)

ピロティ構造の建物は地震発生時の耐震性に注意が必要である

1階に壁がないピロティ構造は耐震性が低くなり、地震発生時の揺れに弱くなるといった注意点があります。

東京都では、旧耐震基準で建てられたマンションのうち、倒壊等の危険性が高いピロティ構造のものに対して、補強に取り組む費用の一部を補助しています。

この補助事業が「命を守るためのピロティ階等緊急対策事業(東京都住宅政策本部)」と題されていることからも、東京都はピロティ構造の耐震性の危うさを、危機的なものであると認識していることがわかります。

補助対象となるのはピロティを有するマンションなど。
補強設計と補強工事にかかる費用の2分の1が補助されます。

なお、補助の上限は設計にかかる費用と工事にかかる費用の合算で、2,625,000円です。

申請書の受付期間は、令和6年4月16日(火)から令和7年1月15日(水)ですが、予算額に達した時点で受付は終了します。

この項では、二つの大震災である阪神淡路大震災と東日本大震災におけるピロティ形式の建物の被害状況について解説します。

これらの被害から改善された点や新たに生まれた防災の視点もあるので、参考にしてください。

阪神淡路大震災の場合

1995年の阪神淡路大震災において、ピロティ形式の建物が倒壊した事例が報告されています。
内閣府の防災情報ページ:阪神・淡路大震災教訓情報資料集【03】建築物の被害によると「全体的にピロティ構造と壁の配置の悪い構造の建築に崩壊したものが多く、これらの中には現行法に適合している建物もあった」との記載があります。

日本では、大きな地震が起きるたびに建築基準法を改正されてきた歴史があり、1981年に宮城県沖地震を受けて「震度6強~7の大地震で建物が倒壊しないこと」という新耐震基準が定められました。

しかし、その新しい基準で建てられた家であっても、ピロティ構造の家は阪神淡路大震災のような都市直下型の地震では被害が多く出たのです。

現在の耐震基準では、設計時にピロティ部分の強度・靭性(※)の割り増しをし、耐震性に配慮するよう定められています。

※靭性(じんせい):材料や構造物の粘り強さ、外力に対して破壊されにくい性質のこと

東日本大震災の場合

2011年の東日本大震災では、ピロティ構造の家は、津波による被害を受けにくいといった調査結果が出ています。

4m未満の津波が襲った地区において、1階部分が鉄筋コンクリートの柱のみとなっているピロティ式住宅と確認できた11棟は、すべて住居部分が完全に残っていたのです。

外壁が無かったため、その分津波の影響を受けなかったと専門家は分析しています。

地震の際には、ピロティ構造は耐震性に不安が残る部分ありますが、津波に対しては被害を少なくする成果があることがわかりました。

耐震性についてさらに高い建築技術を活用すれば、ピロティは沿岸部において、津波に対して防御性の高い建物として価値を持つ、という可能性を示唆しました。

参考:「ピロティ住宅」津波に耐えた 1階は柱、波の力受けず(朝日新聞DIGITAL)

ピロティ構造の住宅を選ぶ際のメリット

ピロティ構造の住宅にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

外観がオシャレであるということのほかにも、土地が狭くても庭や駐車場を確保できるなど、土地を有効に活用できるといった点があげられます。

この項では、ピロティ構造の住宅を選ぶ際のメリットを解説します。

1階部分を有効活用できる

ピロティ構造の1階部分を、多目的スペースとして有効活用できます。
活用例として以下のようなものがあります。

・子どもの遊び場
・自転車置き場
・駐車場
・保管スペース
・ガーデニング
・BBQ

広く自由に使えるスペースがあれば、子どもはのびのびと体を動かして遊べます。
室内では難しいボール遊びやキャッチボールなども、思う存分満喫できるでしょう。

梅雨の時期や日差しの強い時期など、雨や紫外線を気にせず外で遊べるので子どもにとって大変ありがたい遊び場です。

また、ピロティではガーデニングやBBQなども楽しめるため、土地が狭くて庭が確保できなかったといった場合でも、天候を気にせず外遊びを楽しめます。

駐車場や保管スペースとして活用する以外でも、家族みんなで活用できるスペースとして、ピロティは活躍します。

なお、ピロティをさまざまな目的で活用したいと考えている場合には、近くに外水栓を設けると便利でしょう。
子どもたちが水遊びをしたいときなどにも重宝します。

プライバシー空間を確保できる

居住部分の中心が2階以上となるため、街を歩く人から部屋をのぞき込まれる可能性が低くなります。

一般的な住宅では、周辺の土地の高さは同じになることが多いため、窓の高さの位置を工夫したり、外構で視線を遮る工夫をしたりといった対策が必要になります。

しかし、ピロティ構造では生活空間が2階となるため特別な方法をとらなくてもプライベート空間を確保できるのです。

洪水や浸水のリスクを軽減できる

東日本大震災では、津波によって多くの建物が流出するなか、1階部分が柱のみのピロティ構造の家は津波に強かったことは前述した通りです。

外壁がないピロティ構造は津波のエネルギーを強く受けずに済み、浸水の被害を抑えられるため洪水や浸水のリスクが軽減できます。

工法によっては地震に弱くなるケースもありますが、津波や浸水の被害を減らせるという点で、沿岸部に住む人たちにとってはメリットのある構造といえるでしょう。

スタイリッシュな外観の家を実現できる

ピロティは1階部分が開放的な空間となっているため、スタイリッシュな外観の家を実現できます。

細い柱で建物を持ち上げているため、建物全体が浮いているような印象を受けます。

1階部分がスッキリしていることもあり、生活感をあまり感じさせないといった点もメリットです。
一般的な住宅よりデザイン性が高く、印象的な建築デザインを求める人にとって魅力的な構造といえるでしょう。

上層階への風通しが良好である

ピロティは、下の階が空いていることにより上層階への風通しが良好である点もメリットです。

周囲に高い建物があっても、開放的なピロティがあることにより風の通りがよくなり、居室空間である2階へも自然の風が行きわたります。

狭小な土地であっても、快適な居住空間を得られるでしょう。

ピロティ構造の住宅を選ぶ際のデメリット

開放感があり、外観のデザイン性も高いピロティ構造の住宅ですが、デメリットも把握しておくことが重要です。

柱だけで2階以上の建物を支える特殊な構造であるため、高くなりやすい建築コストの問題など、把握しておきたいデメリットについてこの項で解説します。

建築コストが高くなる場合がある

ピロティは鉄骨や耐震性に優れた部材を使用する必要があることから、一般的な住宅よりも建築コストが高くなる場合があります。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造は木造住宅とは異なり、複雑な構造計算が必要となります。
構造計算には専門的な知識を持つ「構造計算適合性判定員」が行うため、費用や時間がかかるのです。

条件によっては綿密な計算と設計が必要となるため、構造計算の費用が上乗せされる場合もあります。

また、鉄骨や鉄筋コンクリート造を採用すると建物が重くなるため、地盤改良が必要となってくるケースもあります。

予算に収まる範囲内でピロティのある理想の住宅が実現できるかどうか、事前によく確認しておきましょう。

階段の昇降が不便に感じる場合がある

ピロティがある建物は、外出時も帰宅時も必ず階段の上り下りが必要となるため、不便に感じる場合があります。

階段の使用が頻繁になるという点では2階にリビングがある住まいも同じなので、ピロティ特有のデメリットというわけではありませんが、高齢になると外出が煩わしくなってしまう場合もあります。

将来的なことを考え、家族で安心して生活できるバリアフリーの対策がとれるよう設計しておくことが大切です。

前もってホームエレベーターを設置する、もしくは今後取り入れやすい間取りにしておくといった対策もおすすめです。
リフォームが必要となる場合があることも、念頭においておきましょう。

また、1階すべてをピロティとするのではなく、1階だけで生活が完結する間取りを居住空間として残して設計しておくというのも、将来を考えたひとつの選択です。

セキュリティ面で防犯対策が必要になる

開放感のあるピロティを駐車場として利用する場合、部外者が侵入しにくいインナーガレージに比べてセキュリティ面で防犯対策が必要になります。

車上あらしにあったり、キズをつけられたりすると精神面だけではなく、金銭面でもつらい思いをすることになってしまいます。

大切な愛車を守るために、ピロティに防犯カメラを設置したり、車の付近に人感センサーライトを設置したりといった防犯対策をとるようにしましょう。

最後に

この記事では、ピロティ構造の家の特徴やメリット・デメリットについて解説しました。

ピロティ構造は、細い柱で2階以上の建物を支えます。
そのため浮遊感を感じさせ、一般的な住宅に比べてデザイン性が高く、特別感を味わえる外観となります。

また、1階の開放感ある空間は多目的に利用できるので、ガーデニング、BBQ、子どもの遊び場など家族で豊かな時間を過ごす場を与えてくれる点もピロティの大きなメリットです。

しかし、ピロティ構造は壁が無いことから耐震性に不安があることも事実でしょう。

日本は地震などの災害が多い国です。
耐震補強をしっかりおこなうことはもちろん、ハザードマップ(※)を確認するなどして災害のリスクが高くない土地を選ぶようにしましょう。

この記事での注意点を参考に、デザイン性が高い外観と魅力ある多目的スペースを持つピロティ構造の家を選択肢のひとつとして検討してみてください。

※ハザードマップ:浸水想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置を表示した地図のこと

【監修者】大石 裕樹

【監修者】大石 裕樹

<保有資格> 司法書士 宅地建物取引士 貸金業取扱主任者 / 24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。

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