耐火建築物とは?知っておきたいメリット・デメリットや注意点を解説
「耐火建築物ってどんな建物なの?」「耐火建築物のほうが資産性は高いの?」など、防災意識の高まりから耐火建築物という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。
耐火建築物とは、火災の際に一定の時間、主要構造部が崩壊しない性能を持つ建築物のことです。
主に、コンクリートなどの不燃材料が使われ、火災が発生した際に、延焼を防ぐ役割を果たします。
都市部では、法律によって耐火建築物が義務付けられているケースもあり、戸建てやマンションを選ぶ際のポイントとなります。
マイホームとして購入する場合は、耐火建築物が資産価値に与える影響も気になるところでしょう。
これから耐火建築物の戸建てやマンションの購入を検討している人は、最後までこの記事を読んでいただければと思います。
耐火建築物とは?
耐火建築物とは、火災時に建物の構造体が一定時間以上燃えにくく、崩壊や延焼を防ぐ性能を有する建築物のことです。
まずは、耐火建築物の定義や種類、防火構造との違いなどについて詳しく解説します。
耐火建築物の定義
耐火建築物は、建築基準法第2条第9号の二および第61条~第63条において、主要構造部(柱・梁・床・壁など)を耐火構造とし、屋根・外壁などの建築部材にも耐火性能を有する建物と定義されています。
都市部など建物が密集しているエリアでは、防災の観点から一定の耐火性能を満たした耐火建築物の建築が義務づけられているというわけです。
耐火建築物を建築するには、市区町村または都道府県などの特定行政庁に建築確認申請書を提出し、耐火建築物として適合しているかの審査・許可を受ける必要があります。
耐火建築物の種類
耐火建築物の種類は、耐火建築物(完全耐火建築物)、準耐火建築物、防火建築物(特例耐火建築物)の3つです。
火災時の安全性に応じて、それぞれの耐火性能や構造・使用材料が異なります。
耐火建築物は、主要部のすべてが耐火構造なので耐火性能が高く、準耐火建築物は、中程度の耐火性能になっています。
防火建築物は、防火地域等に建てられますが、特例により一部に準耐火や防火材料を使用した建物のことです。
耐火構造と防火構造の違い
耐火構造と防火構造は、どちらも火災対策のための建築構造ですが、目的や性能、使われる場所が違います。
耐火構造は、火災による建物の倒壊を防ぐことが主な目的です。
対象は、柱・梁・床・壁などの主要構造部で、耐火時間に明確な基準が定められています。
構造は、鉄筋コンクリート(RC)造、レンガ造、モルタル造が採用されることが多く、コストが高くなるのがデメリットです。
建築確認を申請し、国や特定行政庁での審査・許可を受ける必要があります。
一方で、防火構造は、火災による延焼を防ぐことが目的で、外壁・間仕切り壁・軒裏・開口部まわりなどが対象です。
認定サッシや防火戸など防火認定部材を使えばよく、目安は30分程度と耐火時間の明確な基準はありません。
耐火構造は建物の倒壊を防ぐ構造、防火構造は火の広がりを防ぐ構造と言えるでしょう。
耐火建築物の構造と分類
耐火建築物は、建物の種類や構造の違いによって分類されます。
耐火性能の基準や防火地域や準防火地域における建築要件など確認する点は多いです。
ここでは、耐火建築物の構造の違いや分類の方法について解説します。
耐火建築物と準耐火建築物の違い
耐火建築物と準耐火建築物では、耐火性の面で大きく違います。
耐火建築物は、主要構造部のすべてが耐火構造でつくられ、国土交通大臣の認定または基準を満たした建築物です。
・耐火性能とは以下の2点を満たすこと
〇主要構造部が耐火構造であること
〇屋内外の火災による火熱に、火熱が終了するまで耐えられる性能を有すること(技術基準で定める)
・一定の特殊建築物や、防火地域内の一定規模以上の建築物は耐火建築物とする義務がある
準耐火建築物は、耐火建築物ではないが、準耐火性能を備えた建築物のことです。
・延焼の恐れのある開口部(窓やドア)には、防火戸などの防火設備を設置
・準耐火性能を満たすとは、以下の2つの条件を満たすこと
〇主要構造部が準耐火構造である
〇準耐火構造と同等の性能を有し、技術的基準(外壁の耐火化や不燃材料の使用)に適合している
・一定の特殊建築物や、準防火地域内の一定規模の建築物は、準耐火建築物であることが義務づけられている
建築基準法が定める耐火性能
建築基準法が定める「耐火性能」とは、火災が発生した際に、建物の主要構造部(柱・梁・床・壁など)が一定時間倒壊や延焼を防ぐ性能のことです。
耐火建築物に関する内容は、建築基準法第2条、第27条、および令第107条〜第109条などで細かく定義されています。
建築基準法における耐火性能の主なポイントは、対象となる部位、性能等級(耐火時間)、構造の種類の3つです。
対象となる部位 | 柱、梁、床、外壁、間仕切り壁、屋根など「主要構造部」 |
---|---|
性能等級(耐火時間) |
1時間耐火(60分) 2時間耐火(120分) 3時間耐火(180分) |
構造の種類 |
耐火構造 準耐火構造 防火構造 |
性能等級については、建物の規模や用途、防火地域の区分に応じて、求められる等級が異なります。
建物を建築する際は、求められる等級に応じて建築資材や構造の基準が厳しくなり、それに伴いコストも高くなる点に注意が必要です。
参考:建築基準法(e-GOV・デジタル庁)
参考:建築基準法施行令(e-GOV・デジタル庁)
防火地域・準防火地域の建築要件
防火地域・準防火地域における建築要件は、火災による被害拡大を防ぐために、建築基準法によって厳しく規定されています。
防火地域と準防火地域の建築要件は以下のとおりです。
防火地域 | 準防火地域 | |
---|---|---|
主に指定されるエリア |
・駅周辺、繁華街、大通り沿いなど都市の中心部 ・延焼リスクが特に高い区域 |
・防火地域の周辺部、住宅街や中規模商業地域など ・一定の防火性能が求められるが、防火地域ほど厳しくない |
建築物の構造 | 原則、耐火建築物(主要構造部が耐火構造) | 建物の規模(階数・面積)に応じて、耐火建築物または準耐火建築物が必要 |
木造建築の可否 | 原則不可。(例外あり) | 小規模な場合は防火構造の木造住宅も可 |
延べ面積100㎡以下、階数2以下、軒高7m以下であれば、例外として木造建築が認められる場合があります。
準防火地域では、建物の規模に応じて、耐火建築または準耐火建築が必要ですが、小規模であれば防火構造の木造住宅の建築も可能です。
耐火建築物のメリット
耐火建築物には、多くのメリットがあります。
火災リスクの低減だけでなく、防音性や気密性といった性能面の向上も重要なポイントです。
ここでは、耐火建築物のメリットについて解説します。
火災時の被害を抑えられる
耐火建築物の一番のメリットは、やはり火災時の被害が抑えられる点です。
都市部などの建物が密集しているエリアでは、火災が起こった際に、耐火構造にしていないと一気に火が広がって被害が拡大してしまいます。
しかし、耐火建築物を義務付けることで、有事の際に、避難する時間を稼ぎ、被害を最小限に抑えることができます。
火災保険が安くなる場合がある
火災保険では、建物の構造(耐火性能など)によって保険料が大きく変わります。
保険料は、火災リスクの高さが構造ごとに異なるためです。
火災保険における建物の構造には、マンション構造(M構造)、耐火構造(T構造)、非耐火構造(H構造)の3つがあります。
マンション構造、耐火構造、非耐火構造の順で保険料が安くなり、耐火建築物の場合は、非耐火建築物と比べて30%~60%安くなる場合があります。
防音性・気密性・断熱性の向上
耐火建築物は、火災への強さだけでなく、防音性・気密性・断熱性のような快適性の向上も大きなメリットです。
耐火建築物は、鉄筋コンクリート造(RC造)やレンガ造が多く、壁や床に厚みがあり、遮音性が高く、隣室や上下階からの音を防ぎます。
また、鉄筋コンクリート造の場合、隙間ができにくいので気密性が高く、断熱性に優れています。
耐火建築物のデメリット・注意点
耐火建築物におけるデメリットや注意点についても確認しておく必要があります。
建物の建築費用が高額になる点だけでなく、リフォーム・改修の際にも制約を受ける点には特に注意が必要です。
ここでは、耐火建築物のデメリット・注意点について解説します。
建物の建築費用が高い
耐火建築物は、耐火性能を確保する必要があるので、建物の建築費用が高いのがデメリットです。
建物は、鉄筋コンクリート造やレンガ造などの耐火構造を採用し、建材は、耐火被覆材や防火仕様のものを使用する必要があるため、一般的に木造などの非耐火構造の建物と比べると建築費用が高くなります。
他にも、建築費以外に設計費・監理費・確認申請費といった費用がかかるのでどうしても総合的に割高になる傾向があります。
一方で、耐火建築物は、建築の条件が厳しく、建築コストが高いこともあり、国土交通省は、「部分的な木造化を促進する防火規定の合理化」など、耐火建築物の木造化を促進するための建築基準法改正を実施しています。
参考:部分的な木造化を促進する防火規定の合理化(国土交通省)
今後は、耐火建築物を立てる建築コストが減少していくことが予想されます。
リフォーム・改修の制約がある
耐火建築物は、リフォームや改修においても、建築基準法に基づいて建物全体が耐火構造であることが求められるので、さまざまな制約を受けます。
例えば、壁や天井を撤去・変更する際、耐火被覆や耐火材の再施工が必須です。
新設・撤去する建具や開口部においては、防火戸や耐火サッシの使用が義務づけられることもあります。
他にも、スプリンクラーや防火区画の保持など、防火設備の維持にも配慮が必要でしょう。
耐火性能の確認方法
耐火建築物の耐火性能を確認するためには、いくつかの具体的な方法や資料の確認をする必要があります。
建物の安全性を担保するうえで、耐火性能の有無やその等級は非常に重要な要素です。
ここでは、主に建築関連の書類や設計情報を用いた耐火性能の確認方法について詳しく解説します。
建築確認申請書
耐火性能を確認するうえで、まず基本となるのが建築確認申請書および確認済証です。
建物を新築、増築、改築する際には、建築基準法に基づいて建築確認申請を行い、行政または指定確認検査機関の審査を経て「確認済証」が交付されます。
確認済証には、以下のような情報が記載されています。
・構造種別(鉄筋コンクリート造、鉄骨造など)
・耐火建築物の種別(耐火建築物、準耐火建築物、一般建築物)
建築確認申請書および確認済証の上記の該当項目において、建物の構造や建築基準法に基づく耐火構造を有しているかどうかを確認できます。
詳しい内容を確認したい場合は、特定行政庁の建築指導課などに相談しましょう。
設計仕様書・設計図面
建物を建築する際には、設計仕様書や設計図面を作成します。
建物の設計仕様書や設計図面には、詳細な部材の構造や仕上げ方法が記載されており、構造や部材が耐火性能を有しているかについて確認できます。
建物の設計仕様書や設計図面の主な情報は以下のとおりです。
・仕上表:各部位に使用されている仕上材や被覆材の情報
・仕様書・詳細図:防火・耐火仕様
耐火性能を確認したい場合は、建物の設計仕様書や設計図面の仕様書・詳細図を確認するとよいでしょう。
他にも、構造図に主要構造部が「耐火構造」と明記されていたり、図面や仕様書から外壁・内壁に使われている材料が耐火認定品であることが読み取れたりする場合もあります。
住宅の性能を示すパンフレット
新築の分譲マンションにおいては、販売促進の資料として、住宅の性能を紹介するパンフレットを配布しているケースが多いです。
住宅の性能を示すパンフレットには以下のような内容が記載されています。
・使用されている外壁材・内装材の種類や性能
・国土交通大臣認定の耐火部材に関する記載(認定番号・構造例など)
・建築基準法への適合状況や設計時の耐火等級(※住宅性能評価書と連動しているケースも)
ただし、パンフレットの記載内容はあくまで「販売用資料」なので、正式な証明書類ではありません。
実際に記載されている内容については、必建築確認申請書や設計図書で確認しましょう。
耐火建築物が資産価値に与える影響
今回は、耐火建築物の基礎知識やメリット・デメリットについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
耐火建築物は、耐火性能を有するために、鉄筋コンクリート造やレンガ造といった強固な構造や高性能な部材を採用する必要があります。
そのため、建物の防音性・気密性・断熱性が向上するため、耐火建築物であることが資産価値に与える影響は大きいです。
長期的な目線で「資産としての価値」を考えるならば、耐火建築物は非常に有望な選択肢と言えます。
特に自宅を将来的に売却・賃貸する可能性がある人や、災害リスクの高い地域での建築を検討している人にとっては、耐火性能がもたらす安心感と経済的価値は大きなメリットです。
もちろん、耐火建築物の建築には、一般的な木造建築に比べて初期コストが高くなるというデメリットもあります。
他にも、設計・施工の自由度が制限される場合もあるため、費用対効果や用途に応じた判断が必要でしょう。
これから耐火建築物の購入や建築を検討している方は、本記事を参考に、性能・コスト・将来的な資産性をバランスよく比較・検討し、自分にとって最適な選択をしていただければと思います。

<保有資格>
司法書士
宅地建物取引士
貸金業取扱主任者 /
24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。