建築確認申請が不要になる6つの条件とは?申請費用や必要書類を解説
「新しい家を建てるときは建築確認申請が必要なの?」「建築申請が不要なケースもあるって本当?」など、建物を建てる際の建築確認申請が必要なことはご存じの人も多いでしょう。
建築確認申請は、新築の家や大掛かりなリフォームをする際に、建築基準法のとおりに建物が建てられているかを審査してもらうために必要な申請です。
建築確認では、建築基準法の範囲で安全に建築されているか、周囲に影響を及ぼすような建物を建築していないかなどを建築主事や検査機関が確認します。
しかし、一定の条件を満たせば、建築確認申請が不要になるケースがあるのをご存じでしょうか。
倉庫などの建築物に該当しない場合や文化財に指定されている建物の場合などが当てはまります。
2025年には第4号建築物が第2号、第3号建築物に振り分けられる点についても解説していきます。
建築確認申請が不要であれば、工事期間が短くなる、建築基準法が適用外になるなどメリットも多いです。
これからマイホームの建築や大規模リフォームを検討している人は、最後までこの時期を読んでいただければと思います。
建築確認申請とは
新しく建物を建築する場合や増改築を行う際には、建築基準法の基準内で建築が計画されているかの審査を受けるために建築確認申請が必要です。
建築確認申請をせずに建築すると違法建築になるので注意しましょう。
一方で、建築確認申請が不要になるケースもあります。
ここでは、建築確認申請の基礎的な内容について解説します。
建築確認申請が必要なケース
建築確認申請が必要なのは、建築基準法で定められた一定規模以上の建築物を新築、改築、増築する場合です。
建築確認申請が必要なケースは、建築基準法第6条第1項第1号から第3号までに該当する建築物の、大規模な修繕や模様替えをしようとする場合、または第4号にある建築物を建築しようとする場合が該当します。
①特殊建築物に該当し、床面積の合計が200㎡超
②3階以上の木造建築物、平屋・2階建てで延床面積が500m2超、もしくは高さが13m超、軒の高さが9m超
③木造以外の建築物で、2階建て以上か延床面積が200㎡超
④1~3以外で、都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区又は指定区域内の建築物
申請には、建物の設計図や工事計画書、付近見取り図、構造計算書などを準備する必要があります。
申請は建築主が行いますが、専門的な知識が必要になるので設計事務所や施工会社に依頼して代理で申請してもらうのが一般的です。
建築確認申請をしないと違法建築物になる
建築確認申請をせずに建築すると、違法建築物と見なされ、罰則や取り壊しを求められるケースもあります。
最近では、少なくなりましたが、築年数が古い建物の中には、申請せずに建築している違法建築物も多いです。
以下のようなケースは違法建築物と見なされる可能性があるので注意しましょう。
・建ぺい率・容積率オーバー
・斜線規制違反
・許可を受けた用途とは異なる用途で使っている
斜線規制は、臨家の採光や日当たりなどに配慮して建築する必要があり、建築基準法上で道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限が定められています。
異なった用途で使用するケースには、1階を駐車場の用途で許可を取り、住居にして建築する、屋上に倉庫を建築するなどがあります。
建築確認申請が不要になるケースがある
すべての建築物に申請が必要なわけではなく、特定の条件を満たした場合は不要です。
建築確認申請が不要だと、工期を短縮することができ、建築基準法の制限を受けない建築物を建てられます。
特定の条件には、建築基準法が適用されない建築物や床面積の広さ、仮設建築物など、いろいろなケースがあります。
自身が建てる建物が特定の条件に該当していないかを事前に確認しておきましょう。
建築確認申請が不要な6つのケース
建築確認申請は一定の要件を満たせば不要なケースもあります。
新しい家の建築やリフォームを行う際には、自身の物件が対象になるかを確認しましょう。
ここでは、建築申請が不要な6つのケースについて解説します。
建築基準法の建築物に該当しない倉庫や小屋
小規模な倉庫や小屋のように、建築基準法における建築物に該当しない建物は建築確認申請が不要です。
柱や屋根、壁を備え、屋内として利用できるものは建築物と見なされます。
そのため、倉庫や物置などの住居ではない建築物の場合は、柱や壁が少なくなるので建築基準法における建築物と見なされないケースが多いというわけです。
他にも、プレハブやガレージは、中に人が立ち入らず、10平方メートル以下、防火地域や準防火地域に該当しないといったケースもあります。
文化財に指定された建築物
文化財に指定されている建築物のように、文化財保護法の対象となっている建築物も建築申請は不要です。
建築基準法の第3条において、文化財保護法の規定により、国宝・重要文化財・重要有形民俗文化財等に指定された建築物については、適用外であると明示されています。
ただし、国宝等の建築物または保存建築物の原型を再現する建築物については、特定行政庁の許可や建築審査会の同意が必要なケースもあるので注意しましょう。
参照:歴史的建築物に対する建築基準法の適用(法第3条)(国土交通省)
都市計画区域外の4号建築物(2025年改正)
都市計画区域外の4号物件であれば、建築確認申請は不要です。
日本の国土は、都市計画法によって、都市計画区域は積極的に開発を行うエリア、準都市計画区域は積極的な開発は行わないエリア、それ以外が都市計画区域外の3つに分類されます。
都市計画域内、準都市計画区域内では、都市計画法における建築の制限などがあります。
しかし、都市計画区域外では、都市計画法の制限が適用されず、建築基準法においても、第4号物件は建築確認申請の必要はありません。
【第4号物件の適用条件】
・学校・病院・共同住宅等の建築基準法が定める「特殊建築物」以外であること
・木造建築物で階数は2階以下、延床面積500㎡以下、高さ13m以下、軒高9m以下であること
・木造以外の1階の建築物で延床面積が200m2以下であること
都市計画区域外は、市街化が進んでいない農村、山間部や森林地域、海岸、湖沼周辺が指定されていることが多いです。
市街地から離れているエリアであれば都市計画区域外の可能性が高いので、建築する前に確認しましょう。
ただし、2025年4月以降は法律が改正され、第4号物件は2号物件と3号物件に振り分けられます。
・新2号建築物:木造二階建てまたは木造平屋建てかつ延床面積200平方メートル超
・新3号建築物:木造平屋建てかつ延床面積200平方メートル以下
第2号物件に該当する場合は、構造計算審査を含むすべての項目について、建築確認申請が必要です。
第3号物件については、第4号物件と同様に建築確認申請は必要ありません。
2025年4月以降に、現在の4号物件に該当する建築物を建てる場合は注意しましょう。
参考:2025年4月(予定)から小規模の木造住宅・建築物の構造基準が変わります(国土交通省)
床面積が200㎡以下で特殊建築物以外に変更する建築物
床面積が200㎡以下で特殊建築物以外の用途に変更する場合の建築確認申請は必要ありません。
2019年6月に建築基準法が改正の際に追加されましたが、既存の建物を有効に活用して中古市場を活性化させることが目的です。
ただし、建築基準法や消防法などの規定は従来通りなので、用途変更に伴う手続きや、現行法規に合わせなければならない点には注意が必要です。
用途変更が必要かどうかを確認したい場合は、建物の所在地の市区町村の建築指導課・建築審査課などに確認しましょう
防火地域・準防火地域以外の床面積10㎡以下の増築・改築・移転
防火地域や準防火地域は、火災の被害を最小限に抑えるために建築基準法で定められた指定地域で、建築物を建てる際には、耐火建築物や準耐火建築物などの火災に強い構造や仕様が求められます
しかし、防火地域や準防火地域以外の地域で、床面積が10平方メートル以下の増築・改築・移転を行う場合は、建築確認申請は不要です。
床面積が10㎡の建築物は、ワンルーム程度の大きさなので、小規模な増築・改築・移転が対象と言えます。
ただし、床面積10平方メートル以下の建築物であっても、その一部分でも防火地域や準防火地域に該当する場合は、建築確認申請が必要になるので注意しましょう。
一部の仮設建築物
仮設建築物は、工事期間や災害時に一時的に設置される建築物のことです。
建築は急を要するので、仮設建築物の場合は建築確認申請をする必要がありません。
仮設建築物には、以下のようなものがあります。
・仮設事務所
・材料置き場
・仮設店舗
・仮設興行場
・博覧会建築物
・非常災害時の応急仮設建築物
・普通災害時の公共応急仮設建築物
ただし、3カ月を超えて使用する場合は、仮設許可を取得する必要があるので注意しましょう。
仮設許可を取得すれば、2年間の使用期間の延長が認められます。
建築確認申請の流れ
建築確認申請は、一般的にはハウスメーカーや建築士が代理で行ってくれますが、建築確認申請の流れを知っておくことで、家づくりの打合せやスケジュールの管理がしやすくなります。
建築確認申請の流れは以下のとおりです。
・建築確認申請に必要な書類を準備する
・建築確認申請書を提出する
・建築主事または指定確認検査機関による審査を受ける
・審査に合格すると確認済証が交付される
・工事着工する
・工事中に中間検査が必要な場合は受ける
・工事完了後に完了検査を受ける
・完了検査に合格すると検査済証が交付される
建築確認申請後に、建築主事や指定確認検査機関による審査を受け、確認済証が交付されると工事を始められます。
その後、工事の途中で中間検査、最終の完了検査を受けて検査済証が交付されるのが正式な流れです。
しかし、中には工事ができる確認済証の交付まで完了させた後、申請した内容と違う工事を行うケースもあります。
こういった物件は、建築基準法を守っていない違法建築となっている可能性が高いので、中古物件を購入する際は、検査済証が交付されているかを確認するとよいでしょう。
建築確認申請の費用や必要書類
建築確認申請を進めるにあたって、費用相場や必要書類を確認しておくことは重要なポイントです。
建築確認申請の費用や必要書類は、建物の床面積や申請する自治体、検査機関によって異なるので、事前に確認しましょう。
費用相場
ここでは、東京都の費用相場をご紹介します。
東京都では、建築確認申請の費用は、床面積が30㎡を超え100㎡以内の建築物は9,400円、100㎡超え200㎡以内の建築物で14,000円です。
中間検査や完了検査にも費用が必要で、中間検査は床面積が30㎡を超え100㎡以内の建築物は11,000円、完了検査も同様に11,000円の費用がかかります。
民間の検査機関を使うと費用は少し高くなる傾向にある点には注意しましょう。
費用については、決められた期日内に現金で支払う必要があるので、事前に資金の準備しておく必要があります。
必要書類
建築確認申請の書類は、専門的な内容の書類が多く、個人でそろえるのは難しいので、書類の準備は委任したハウスメーカーや建築士に任せるとよいでしょう。
ただし、建築主として実際にどういった書類を提出するかは知っておく必要があります。
建築確認申請に必要な書類は以下のとおりです。
・確認申請書
・建築計画概要書
・委任状(代理者が申請する場合は必要)
・各種図面(意匠図、構造図、設備図など)
・シックハウス計算表
・公図
・工事届
・使用建築材料表
・圧力損失計算シート
・建築基準関係規定チェックリスト
建築確認申請の書類は、建築基準法施行規則や協会が定める業務規程などによって異なるので、上記以外にも書類が必要になるケースもあります。
構造計算適合性判定が必要な物件は、建築確認申請とは別に指定構造計算適合性判定機関に申請する必要があるので、建築確認申請の準備を進める中で事前に確認しましょう。
建築確認申請に関するQ&A
建物を建築・改築する際に必要となる建築確認申請。
しかし、どのような場合に必要なのか、申請しなかった場合にどのような影響があるのかなど、疑問に思う方も多いでしょう。
ここでは、建築確認申請に関する重要なポイントについて解説します。
申請が必要な場合にしなかったらどうなりますか?
建築確認申請が必要な建物で申請をせずに工事を進めた場合、建築基準法違反となり、違法建築物として行政から是正指導や工事の中止命令が出される可能性があります。
さらに、違反状態が改善されない場合、最悪の場合は建物の撤去命令が出されることもあります。
また、建築確認を受けていない建物は登記ができない、売却時にトラブルになるなど、後々の手続きにも影響を及ぼします。そのため、事前に申請が必要かどうかをしっかり確認し、適切に手続きを進めることが重要です。
カーポートやガレージは建築確認申請が必要ですか?
カーポートやガレージの建築確認申請の要否は、建築基準法や地域の条例によって異なります。一般的に、以下のような条件に該当する場合は申請が必要になります。
カーポート:屋根があるものでも、支柱の本数や延床面積によって申請の要否が決まります。例えば、10㎡以下のカーポートであれば申請不要とされるケースが多いですが、それを超える場合は申請が必要になります。
ガレージ:建築物とみなされるため、ほとんどの場合で建築確認申請が必要です。特に、壁やシャッターがあり、固定された構造のものは対象となります。
地域によって細かな基準が異なるため、事前に自治体や専門家に相談することをおすすめします。
建築確認申請が却下される主な理由はなんですか?
建築確認申請が却下される主な理由として、以下のようなケースが挙げられます。
建築基準法に適合していない
建物の構造や高さ、採光・通風の条件などが法律の基準を満たしていない場合、申請が認められません。特に、耐震基準や防火規制に関する条件は厳格に審査されます。
都市計画法や条例に違反している
建築予定地が用途地域の規制に合わない場合や、建ぺい率・容積率を超過している場合、申請は却下されます。また、景観条例や高さ制限などの地域独自の規制にも注意が必要です。
必要書類の不備・誤記
申請書類に不足がある、記載内容に誤りがある場合、審査が通りません。設計図面や計算書の記載ミスなども却下の原因になります。
申請が却下されると工事のスケジュールが遅れるだけでなく、計画の見直しが必要になるため、事前に専門家と相談し、適切な準備を行うことが大切です。
まとめ
今回は、建築確認申請の不要なケース、申請の流れや費用相場、必要書類などについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
居住用の戸建てを建築する際は、建築確認申請が必要です。
建築確認申請は、自身でするケースは少なく、ハウスメーカーや建築士に一任するのが一般的ですが、申請にどういった書類が必要か、どのくらいの期間がかかるかを知っておくと、家づくりのスケジュール調整や建築の打合せがスムーズに進められます。
建築確認申請を行い、最終の完了検査で検査済証をもらった物件は、売却する際にも建築物としての信頼性が高く、資産性も高くなります。
倉庫や小屋、既存の建築物の増築・改築など、建築確認申請が不要なケースもあり、知識として知っておくことは重要ですが、建築確認申請が必要な建築物を建築する際は必ず建築確認申請を行いましょう。
これから新築の戸建てや建築物を建てる計画がある人は、この記事を参考に、建築確認申請について理解を深めていただければと思います。

<保有資格>
司法書士
宅地建物取引士
貸金業取扱主任者 /
24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。