初期費用なしの賃貸物件のデメリットとは?後悔しない選び方を解説
「引っ越したいけど、敷金礼金の準備ができない」
「一人暮らしを始めたいけど、初期費用がない」
このような悩みを持っている方は、多いのではないでしょうか。
賃貸物件を借りる際の大きな問題が、敷金・礼金などの初期費用です。
しかし近年、こうした初期費用の負担を軽減できる、敷金礼金なしの賃貸物件が増加しています。
この背景には、少子高齢化による入居者数の減少が引き起こした競争の激化など、さまざまな要因があります。
このような背景から、敷金礼金なしの賃貸物件は、新生活のスタートを後押しする選択肢として注目を集めているのです。
ただし、初期費用が不要というメリットがある一方で、家賃が割高になる可能性や、退去時の費用負担など、考慮すべき点も存在します。
本記事では、敷金礼金なしの賃貸物件の特徴やデメリット、選び方について、詳しく解説していきます。
初期費用がゼロの賃貸物件の契約を検討している方や、一人暮らしを始めたいけど、初期費用が用意できないという方は参考にしてください。
目次
初期費用なしの賃貸物件は敷金礼金が無料
日本において多くの場合、賃貸物件を契約する際には敷金と礼金を初期費用として支払わなくてはいけません。
しかし、新生活を始めるにあたり、初期費用がないという方も多いでしょう。
近年では初期費用としてかかる敷金・礼金が無料となる、敷金礼金なしの賃貸物件、いわゆる「ゼロゼロ物件」が存在し、増加傾向にあります。
この背景には、賃貸市場における大きな変化が関係しています。
まず、賃貸物件探しが賃貸情報誌からオンラインに移行したことで、入居希望者は簡単に物件を比較できるようになりました。
さらに、少子高齢化の影響で入居者数が減少したため、オーナー間の物件競争が活発化しており、他の物件よりも良い条件を提示して「空室を埋めたい」と考えるようになっています。
加えて、家賃保証システムの普及により、入居者の家賃滞納リスクを家賃保証会社が管理するようになりました。
このような原因を背景として、初期費用ゼロの賃貸物件が登場するようになったのです。
入居者にとって敷金礼金なしの賃貸物件の魅力は、転居時の費用負担が大幅に軽減される点です。
敷金・礼金の支払いが不要になることで、新生活に必要な家具や家電の購入資金として活用できます。
気軽な住み替えを可能にする敷金礼金なしの賃貸物件は、入居者の生活スタイルに合わせた柔軟な住まい選びを実現できることがメリットです。
初期費用のすべてが無料になるわけではない
敷金礼金なしの賃貸物件であっても、支払いが必要な費用は複数あります。
契約にあたり、家賃の前払いや火災保険料、家賃保証会社への保証料、不動産会社への仲介手数料は必要です。
物件によって追加料金が発生するケースもあります。
例えば、マンションの24時間設備トラブル対応サービスの加入料、鍵の交換費用、地域コミュニティへの町内会費などです。
プロの引越し業者に依頼する場合は、引越し料金も考慮に入れる必要があります。
また、初期費用を抑えた敷金礼金なしの物件には、退去時の費用が発生することがあるため注意が必要です。
入居時の費用負担を軽減する代わりに、退去時に追加料金が発生する仕組みを採用しているからです。
このような物件では、入居者は退去時の原状回復を行う必要があるため、退去時のクリーニング代や修繕費用は別途請求されるでしょう。
このように、敷金なしの物件では、退去費用として別途の料金請求を受ける可能性が高いと言えます。
賃貸契約の際は、入居時の費用だけでなく、退去時に必要となる費用についても確認しておきましょう。
不動産会社に費用の詳細を確認し、トータルコストを把握しておくと安心です。
敷金礼金以外にかかる初期費用の内訳
敷金礼金がかからない賃貸物件では、賃貸物件を借りる場合、主に以下のような項目が初期費用として必要です。
・前家賃
・日割り家賃
・仲介手数料(税込)
・火災保険料
・保証会社利用料
・鍵交換費用
・クリーニング代
それぞれの費用の目安は以下のようになります。
家賃は8万円を、入居日を月の半ばと想定しています。
項目 | 費用目安 |
前家賃 | 8万円 |
日割り家賃 | 4万円 |
仲介手数料(税込) | 8.8万円 |
火災保険料 | 2万円 |
保証会社利用料 | 4万円 |
鍵交換費用 | 2万円 |
クリーニング代 | 4万円 |
初期費用は家賃を基準に計算されるため、家賃が高額な物件ほど、敷金・礼金なしのメリットは大きくなると言えるでしょう。
敷金礼金なしの賃貸物件がある理由
上述したように、敷金礼金なしの物件は増加傾向にあります。
敷金礼金なしの賃貸物件の提供は、入居希望者と物件オーナー双方にメリットをもたらす仕組みとして定着しつつあり、賃貸市場の変化に対応した新しい契約形態として普及が進んでいるのが現状です。
その理由には、以下の3つが挙げられます。
・退去時の費用項目が多いため
・周辺地域の競争率が高いため
・空室リスクを避けるため
それぞれについて、詳しく見てきましょう。
退去時の費用項目が多いため
物件オーナーにとって敷金礼金なし物件の退去時の費用項目を多くすることで、収益管理の観点で大きなメリットがあります。
退去時の費用を直接請求できる仕組みは、物件オーナーの収益確保につながります。
退去時に発生する、物件のクリーニング代などの主な費用項目は以下のとおりです。
・壁紙の張り替え工事費用
・フローリングのワックス施工料
・エアコン洗浄作業代金
・専門業者による室内清掃費用
このように、敷金がない契約形態の場合、作業ごとの費用を明確に提示し、入居者から直接徴収することが可能です。
通常の賃貸契約では敷金の金額を超える修繕費用の回収はできません。
一方で、敷金礼金なしの物件では、退去時に費用を請求される可能性があります。
また、物件オーナーは以下のような追加料金も設定可能です。
・鍵の交換費用
・契約期間満了前の解約違約金
このように、柔軟な費用設定が可能な敷金礼金なしの物件は、物件オーナーの収益性向上に効果的な仕組みとなっているため、増加傾向にあると言えるでしょう。
初期費用ゼロの物件というだけで、敷金礼金なしの賃貸物件を選択しようと考えている方は、退去時の条件を契約段階でしっかり把握するようにしましょう。
周辺地域の競争率が高いため
周辺地域の競争率の高さも、敷金礼金なしの物件が増えている理由として挙げられます。
賃貸物件の供給過多の状況が生じたため、オーナーは入居者確保のため差別化戦略を取る必要があるのです。
敷金・礼金をなくすことで初期費用を軽減し、より多くの入居希望者にアピールが可能です。
これは物件の早期満室化や、4月中旬から8月にかけてのオフシーズン対策としても効果的とされています。
また、敷金礼金をなくすことで、競合物件との差別化にも役立ち、年間を通じて安定した稼働率維持につながることが考えられます。
特に、新築物件の場合、物件オーナーはローン返済のために早期満室化が求められることもあり、敷金礼金なしの賃貸物件は有効な手段として活用されているようです。
ただし、家賃が割高になる、物件の質や立地に問題があるという可能性もあります。
また、契約時の違約金などが発生するケースもあるため、敷金礼金なしの賃貸物件を選択肢に入れている場合は、契約内容を十分に確認し、物件の総合的な魅力を判断することが重要です。
空室リスクを避けるため
敷金礼金なしの賃貸物件は、賃貸物件における空室リスクを回避するために考えられた仕組みです。
敷金と礼金を無料にすることにより、入居者の心理的なハードルを下げ、賃貸契約を促進する効果があります。
敷金礼金なしの物件が、賃貸市場の魅力的な物件として注目される理由は、前述のとおり、初期費用の削減効果にあります。
賃貸契約に必要な金額を抑えることは、入居希望者が物件を選ぶ際の基準として重要な要素だからです。
敷金礼金なしの物件は、賃貸市場における物件数の増加が増加し、供給過多による競争激化に加え、入居者の初期費用に対する意識の変化という大きな影響を受けて誕生したといえるでしょう。
賃貸保証会社の普及も、この賃貸形態の拡大を後押ししています。
入居者の審査基準や家賃保証の仕組みが整備されたことにより、物件オーナーの不安を軽減し、空室リスクを回避できる環境が整ったことも敷金礼金なしの物件が誕生した理由のひとつです。
初期費用を抑えたいと考えている方や、一人暮らしをしたいが、初期費用がないという学生、短期滞在者には向いていますが、長期居住の場合は通常物件とを比較するようにしましょう。
初期費用がゼロだからといって、すぐに賃貸契約を結ぶのではなく、自分のニーズに合った物件を選ぶことが重要です。
初期費用なしの賃貸物件のデメリット
敷金礼金なしの賃貸物件には、初期費用が抑えられ、個人の生活スタイルに適したタイミングで引越しが可能というメリットがあります。
しかし、敷金礼金なしの賃貸物件を利用する際には、デメリットもあるので注意が必要です。
初期費用がかからない賃貸物件のデメリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。
・家賃が相場より高い場合がある
・立地や設備に問題がある可能性がある
・物件の数が限定されている
それぞれのデメリットについて、詳細を見ていきましょう。
家賃が相場より高い場合がある
敷金礼金なしの賃貸物件における料金設定の仕組みには、見落としがちなポイントがあります。
賃貸契約時の初期費用を無料にする代わりに、毎月の家賃に追加料金が含まれているケースが多く見られます。
家賃設定の仕組みについて、具体的な数字で見てみましょう。
標準的な賃貸契約では月額家賃10万円で礼金20万円の物件が、ゼロゼロ物件として提供される場合、月額家賃は11万円に設定されることがあります。
2年間の契約期間で比較すると、敷金礼金を含んだ契約方式では家賃240万円と礼金20万円で総額260万円です。
一方、ゼロゼロ物件では月額家賃11万円の24か月分で総額264万円となり、実質的な負担額は増加する可能性があるのです。
入居希望者にとって初期費用の負担軽減は魅力的な要素ですが、長期的な視点での判断が必要になります。
物件選びの際には、周辺エリアの家賃相場を十分に調査しておきましょう。
また、敷金・礼金が不要となった背景には、物件のオーナー側の事情やプロモーション戦略が影響していることも考えられます。
仲介業者や物件のオーナーに対して、敷金・礼金が無料となった理由を確認することも判断材料の一つになります。
入居を検討する場合は、初期費用の削減効果だけでなく、契約期間全体での支払総額を計算し、家賃の妥当性を慎重に見極めることがおすすめです。
立地や設備に問題がある可能性がある
敷金礼金なしの賃貸物件には、立地条件に問題があることがあります。
駅からの距離が遠く、周辺にスーパーや病院などの施設が少ない地域に位置することが多く、騒音や治安の問題を抱える場合もあります。
また、物件の経年劣化による設備面の不具合も特徴的な問題です。
建物の老朽化が原因となり、水回りや空調設備の性能低下、壁紙の剥離、床材の損傷などの問題が発生しているかもしれません。
さらに、収納スペースの不足や日当たりの悪さ、インターネット環境の整備不足など、日常生活における不便さもあるでしょう。
これらの問題は、物件のオーナーが設備投資や維持管理費用を抑制していることが原因の可能性が考えられます。
入居を検討する場合は、内覧の際に住環境や設備の状態を入念に確認しておくことが大切です。
物件の数が限定されている
敷金礼金なしの物件の魅力は、初期費用の低さにありますが、物件の供給数が限られていることがデメリットのひとつです。
そのため、入居希望者の選択肢を大きく制限する要因となっています。
供給状況は地域ごとに異なるのが特徴的です。
例えば、都心部においても敷金礼金なしの物件の数は異なります。
一般的に、人気エリアでは敷金礼金なしの物件の数は少なく、人気エリアを離れると増える傾向にあります。
敷金礼金なしの賃貸物件は、築年数が古いものや駅からの距離が遠いもの、設備の老朽化が進んだものが多く見られるのが特徴です。
また、日照条件の悪さや、生活利便施設へのアクセスの悪さなど、居住環境面での課題も指摘されています。
入居を検討している場合は、初期費用だけでなく、長期的な住環境の快適性を重視した物件選びが求められます。
希望条件と現実的な選択肢を比較し、優先順位を明確にしてから慎重に判断することがおすすめです。
初期費用なしの賃貸物件を選ぶ際のポイント
敷金礼金なしの賃貸物件には、初期費用が抑えられるというメリットがある一方、家賃相場が高くなるなどのデメリットがあることを見てきました。
ここでは、敷金礼金なしの賃貸物件を選択肢として考えている場合に、注意したいポイントについて解説します。
ポイントは、以下の3つです。
・契約内容や費用の詳細を確認する
・敷金礼金以外のトータルコストを比較する
・保証会社の利用条件を確認する
それぞれについて、詳しく解説していきます。
契約内容や費用の詳細を確認する
敷金礼金なしの賃貸物件の契約時には、契約内容を詳細に確認することが不可欠です。
契約書類と重要事項説明書を入念に確認することで、契約条件を正しく理解することができます。
解約に関する条件設定では、中途解約時の違約金や予告期間などの規定を確認する必要があります。
また、仲介手数料や火災保険料など、敷金・礼金には含まれない費用の有無も確認しましょう。
退去時に発生する費用として、原状回復費用やクリーニング代金の負担についても事前確認が必要となります。
周辺相場との比較分析を行い、家賃設定の妥当性を見極めることも大切です。
契約内容を細部まで精査することにより、入居前はもちろん、退去する際のトラブルを未然に防ぐことができます。
敷金礼金以外のトータルコストを比較する
敷金礼金なしの賃貸物件では、初期費用が抑えられる一方で、実質的な費用負担には注意が必要です。
例えば、家賃が通常よりも高めに設定されている可能性があります。
長期間入居の場合、毎月の家賃差額が積み重なり、結果的に総支払額が増加する可能性があります。
また、退去時には修繕費用やクリーニング代金が入居者の全額負担となることがあるため、敷金が無いことによる影響を受けるかもしれません。
さらに、仲介手数料や火災保険料など、別途必要となる初期費用も見逃せないポイントです。
賃貸契約を検討する際は、まず、契約期間全体での支払総額を計算するようにしましょう。
月々の支払いと初期費用のバランス、退去時の費用も含めて、通常の賃貸物件との比較が必要です。
解約条件や物件の品質も重要な判断材料となります。
敷金礼金なしの賃貸物件が、お得かどうかについては、入居者の生活状況や居住予定期間によって変化するため、自身のニーズに合わせた慎重な検討が求められます。
保証会社の利用条件を確認する
敷金礼金なしの賃貸物件を借りる際には、保証会社の利用条件をしっかり確認することが重要です。
初期費用が不要でも、多くの物件で保証会社との契約が必要となっています。
保証会社を利用する場合、初回手数料は家賃の0.5〜1ヶ月分が標準的な金額です。
また、毎月の賃料とは別に保証料が発生するプランもあるため、中長期的な費用計画を立てることをおすすめします。
次に、保証会社の審査があることも忘れてはいけません。
審査に通らなかった場合、入居できなくなる可能性があります。
各保証会社で設定されている基準が異なるため、事前に確認しておくことで、余裕を持った準備ができるでしょう。
一般的に、物件オーナーや不動産管理会社から、指定の保証会社の利用を求められます。
入居希望者が保証会社を任意で選定できないことも考えられます。
敷金・礼金なし物件は初期投資を抑制できる魅力的な選択肢です。
ただし、保証会社を利用するための諸費用を含めた総額の把握しておくことが重要です。
初期費用がかからない場合でも、想定以上の支出が発生する可能性を考慮しながら検討することをおすすめします。
さいごに
敷金礼金なしの賃貸物件は、初期費用を抑えたい入居希望者にとって魅力的な選択肢です。
このような物件が増加している背景には、賃貸市場のオンライン化による物件比較の容易さ、少子高齢化による入居者数の減少、家賃保証システムの普及などがあります。
ただし、敷金礼金なしの物件を選ぶ際は、以下の注意が必要です。
まず、初期費用が抑えられる一方で、毎月の家賃が相場より高くなる可能性があります。
また、立地や設備面での課題を抱えていることもあり、物件の選択肢も限定される傾向にあります。
契約時には、解約条件や退去時の費用負担、保証会社の利用条件などをs詳細に確認することが重要です。
特に、契約期間全体での支払総額を計算し、通常の賃貸物件と比較検討することで、自身のニーズに合った物件選びが可能となります。
初期費用ゼロで賃貸物件が借りられることは、非常に魅力的なことです。
しかし、最終的に通常の賃貸物件を借りた場合よりも、費用がかさんでしまうことも考えられます。
賃貸物件探しは、自身のライフスタイルに最適なものを選ぶことが肝心です。
経済的な負担だけに目をやるのではなく、総合的に判断して、自分自身のスタイルに合う物件を選ぶようにしましょう。

<保有資格>
司法書士
宅地建物取引士
貸金業取扱主任者 /
24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。