マンション住み替えのタイミングは?失敗しないための注意点を解説
「マンションの住み替えを行う方法を知りたい」「住み替えで使える住宅ローンにはどんな種類があるの」など、マンションの住み替えをスムーズに進める方法を知りたいという人も多いのではないでしょうか。
マンションの住み替えは、ライフステージや家族構成の変化に合わせて住環境を見直す大きなイベントです。
住み替えを検討する理由には、子どもの成長に伴う部屋数の不足、老後を見据えたバリアフリーへの対応、通勤・通学の利便性向上など、それぞれの家庭によって異なります。
最近では、都市部のマンションや戸建ての価格が高騰しており、現在住んでいる自宅の価格の上昇を理由に売却する人も多いです。
マンションの住み替えで失敗しないためにも、住み替えの方法や費用、住宅ローンについて知識をつけておくことが大事です。
これから住み替えを検討する人は、安心して計画を立てられるよう、具体的な流れや準備のヒントをお伝えできればと思いますので、最後までこの記事を読んでいただければと思います。
目次
マンションの住み替えを行う3つの方法
マンションの住み替えを考える際に最も悩むのが、「売却と購入のどちらを先に進めるか」という点です。
旧住居を売ってから次の家を買う売り先行か、先に新住居を購入してから旧住居の売却に取りかかる買い先行か、それとも同時進行で進めるのかを決める必要があります。
- 売り先行(旧住居を売ってから新住居を買う)
- 買い先行(先に新住居を買ってから旧住居の売却に取りかかる)
- 同時進行(売り、買いのタイミングを合わせて同時進行で進める)
それぞれにメリットとデメリットがあり、資金計画やリスクの取り方によって最適な方法は異なります。
ここでは、住み替えを進める際の3つの代表的な方法について詳しく見ていきましょう。
売り先行
売り先行とは、現在のマンションの売却を決めてから新居を購入する方法です。
売却資金で旧住居の住宅ローンの返済ができるので、オーバーローンやつなぎ融資を使わなくてよく、リスクを抑えた資金計画が組めるのがメリットと言えます。
一方で、売却後すぐに次の住まいが決まらない場合、仮住まいが必要になるケースがあるため、その分の費用や引っ越しの手間が増える可能性がある点には注意が必要です。
買い先行
買い先行とは、新しいマンションを先に購入し、引っ越し後に現在の住まいを売却する方法です。
引っ越しを焦らずにでき、物件選びにも余裕を持てる点がメリットと言えます。
一方で、旧住居と新住居のローンが二重になるダブルローン状態になるため、売却が想定より長引いた場合に、家計への負担が大きくなるリスクがあります。
買い先行で進める場合は、リスクを想定し、余裕を持った資金計画を立てましょう。
同時進行
同時進行とは、売却と購入のタイミングを調整しながら同時に進める方法です。
予定どおりに進めば、仮住まいに住まなくていいので、無駄なく引っ越しができるので、同時進行は理想的な方法と言えます。
ただし、契約や引き渡しのスケジュール調整が難しく、売買双方のタイミングが少しでもずれると資金繰りに影響が出る可能性がある点には注意が必要です。
不動産会社や金融機関と密に連携し、慎重に進めることが成功のカギとなります。
マンションの住み替えにかかる費用
マンションの住み替えを検討する際には、「売却」「購入」「購入後」といった段階ごとにさまざまな費用が発生します。
新居の購入価格や売却金額だけに目を向けてしまうと、思った以上に資金が必要になるケースも多いです。
ここでは、住み替えに伴って代表的にかかる費用を3つのタイミングに分けて整理してみましょう。
売却にかかる費用
旧住居を売却する際には、不動産会社へ支払う仲介手数料や、売買契約に必要な印紙税が発生します。
売却にかかる主な費用は以下のとおりです。
費用項目 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
仲介手数料 | 不動産会社へ支払う手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税(上限) |
印紙税 | 売買契約書に貼付 | 数千円〜数万円 |
抵当権抹消登記費用 | 住宅ローン残債がある場合に必要 | 約1〜2万円 |
ローン一括返済費用 | 繰上げ返済手数料など | 数千円〜数万円 |
譲渡所得税 | 売却益が出た場合に課税 | 利益に応じる(約20%前後) |
住宅ローンが残っている場合は、抵当権抹消登記費用、場合によってはローン残債を一括返済するための資金が必要なケースもあります。
売却益が出た場合には譲渡所得税の課税対象となることもあるため、利益が出そうな場合は事前に確認しましょう。
購入時にかかる費用
新住居を購入する際にも、物件価格のほかに、契約に必要な費用や住宅ローン関連の費用などの費用が必要です。
購入時にかかる主な費用には、以下のようなものがあります。
費用項目 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
仲介手数料 | 仲介会社を利用した場合 | 購入価格×3%+6万円+消費税(上限) |
印紙税 | 売買契約書に貼付 | 数千円〜数万円 |
登記費用(司法書士報酬含む) | 所有権移転登記・抵当権設定登記など | 数万〜十数万円 |
住宅ローン関連費用 | 事務手数料・保証料 | 数万円〜数十万円 |
火災保険料 | 加入が必須 | 10万〜20万円(数年分一括払いが多い) |
修繕積立基金・管理準備金 | 新築の場合に必要 | 数十万円程度 |
固定資産税・管理費の日割り精算 | 中古購入の場合に発生 | 数千円〜数万円 |
購入時のほうが、売却時よりも支払いの項目が多いです。
新築の場合は、修繕積立基金や管理準備金、中古の場合は固定資産税や管理費の日割り精算なども考慮に入れる必要があります。
購入後にかかる費用
新住居の購入後は、引っ越し費用や家具・家電の準備など新生活に関連する支出が発生します。
購入後にかかる主な費用は以下のとおりです。
費用項目 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
引っ越し費用 | 新居への移動 | 数万〜十数万円 |
家具・家電購入費用 | 新調・買い替えにかかる費用 | 数十万〜百万円以上 |
管理費・修繕積立金 | 毎月のランニングコスト | 数千円〜数万円/月 |
固定資産税・都市計画税 | 毎年かかる税金 | 数万〜十数万円/年 |
さらに、マンションでは毎月の管理費・修繕積立金に加え、固定資産税や都市計画税といった税金も毎年発生します。
これらのランニングコストは、一時的なものではなく、長期的に家計へ影響を与えるため、無理のない資金計画を立てることが大切です。
住み替えで住宅ローンを利用する際の注意点
マンションの住み替えでは、多くの場合、新居の購入にも住宅ローンを利用することになります。
しかし、売却と購入が同時に進まないケースも多く、資金繰りや借入方法には注意が必要です。
特に「オーバーローン」「住み替えローン」「つなぎ融資」といった仕組みを正しく理解していないと、返済負担が重くなったり資金が不足したりするリスクがあります。
ここでは、それぞれの仕組みと注意点を具体例とともに解説します。
オーバーローン
オーバーローンとは、担保である不動産の売却価格を上回る借入残高がある状態のことです。
購入時にオーバーローンになるケースとしては、金融機関によって、新居の購入費に加えて、仲介手数料などの諸経費まで借りられるケースがあります。
また、売却時にオーバーローンになるケースとしては、売却価格よりも住宅ローンの残高のほうが多いケースです。
例えば、ローン残高が2,500万円残っているのに、売却価格が2,200万円にしかならなければ、300万円の不足が発生します。
この不足分を自己資金で補えなければ、住み替えが難しくなります。
都市部では、不動産価格が上昇しているケースもありますが、地方では不動産価格が下がることもあるため、住み替えを検討する際には、まずは、旧住居がオーバーローンになっていないかを確認しましょう。
住み替えローン
住み替えローンとは、売却物件のローン残債と新居購入のためのローンを一本化して借りられる仕組みです。
例えば、新居の購入価格が3,000万円の場合、旧住居のローン残高2,500万円・売却価格2,200万円とすると、不足分300万円と新居購入費用3,000万円を合わせて3,300万円を新しい住宅ローンとして組むことができます。
一方で、借入額が大きくなるため、毎月の返済額や返済期間の負担が重くなる点には注意が必要です。
金融機関によっては利用条件が厳しく、年収や返済比率の審査に通らない場合もあるため、住み替えを進めるまえに、事前審査を行って借入可能かを確認しておくとよいでしょう。
つなぎ融資
つなぎ融資とは、売却代金が入る前に新居の購入代金を一時的に借りる仕組みです。
例えば、新居の引き渡しが先に来て、売却代金の入金が1〜2か月遅れる場合、その間の資金をつなぎ融資で補います。
短期間の利用が前提ですが、金利は通常の住宅ローンよりも高めに設定されているため、長引くと負担が大きくなります。
また、売却が予定どおり進まないと返済計画に狂いが生じるリスクもあるため、売却の見通しをしっかり立ててから利用することが大切です。
マンションの住み替えで失敗しないためのポイント
マンションの住み替えは、売却と購入を同時に進める必要があるため、スケジュールの調整や管理が重要と言えます。
調整が上手くいかないと「売却が間に合わずに資金が不足した」「思ったより高く売れずにローンが残った」「購入が先行してダブルローンに苦しんだ」といった失敗につながります。
マンションの住み替えで失敗しないためには、事前の準備と情報収集、そして専門家の力を借りながら計画的に進めることが大切です。
ここでは、マンションの住み替えで失敗しないための3つのポイントについて解説します。
住み替えの十分な準備期間を確保する
住み替えでは「売却」と「購入」のタイミングを調整する必要があり、思った以上に時間がかかる点に注意が必要です。
例えば、売却活動だけでも数か月を要することが一般的で、さらに購入先の検討や住宅ローンの手続きも加わると半年以上かかることもあります。
準備期間が短いと、スムーズに住み替えが出来ずに、仮住まいが必要になる、旧住居の売却が進まずにダブルローンの期間が長くなるなど、資金面の負担が大きくなるリスクが高まります。
マンションの住み替えで失敗しないためには、少なくとも半年以上の余裕を持って計画を立てるのが理想です。
相場の見積もりを複数の不動産会社に依頼する
マンションの売却価格は、不動産会社によって査定額に差が出ることがよくあります。
査定する不動産が1社だと比較ができないので、相場よりも安いのか、高いのかがわからず、不動産会社の査定を鵜呑みにして売却した結果、後で調べたら相場よりも安かったと後悔するケースも多いです。
最低でも2〜3社には査定を依頼し、提示された金額の根拠や販売戦略を比較検討することで、相場をつかみ、適正な売却か過去を設定しましょう。
専門家に相談しながらスムーズに進める
住み替えは資金計画・売却活動・購入契約など複数の手続きが重なるため、自己判断だけで進めるのは危険です。
不動産会社の担当者だけでなく、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家へ相談することも選択肢に入れる必要があります。
特に資金面では、専門家に相談したほうが、ローンの組み方や税金の対策について具体的なアドバイスを得られるので安心です。
マンションの住み替えに関するよくある質問
マンションの住み替えの検討を始めると、さまざまな疑問や不安を感じると思います。
疑問や不安をひとつずつ解決していくことが、マンションの住み替えを成功させる重要なポイントです。
ここでは、住み替えで特に質問の多いポイントを取り上げ、できるだけわかりやすく解説します。
最初は何から始めればいい?
マンションの住み替えを考えたとき、最初に大切なのは「売り」と「買い」のどちらを先に進めるかを決めることです。
現在の住まいを売却してから新しい住まいを探す「売り先行」、新しい住まいを購入してから売却する「買い先行」、そして両方を同時に進める「同時進行」と、3つの進め方があります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、家族構成や資金状況によって適した方法は変わります。
いずれの方法を選ぶにしても、まずは不動産会社に相談して現在のマンションの査定を受け、売却可能な価格の目安を知ることが重要です。
そのうえで、住宅ローンや頭金などを含めた資金計画を立てると、全体の流れが見えやすくなり、スムーズに住み替えを進めることができるでしょう。
住み替えに関わる税金や保険は?
マンションを売却・購入する際には、さまざまな税金や保険の手続きが必要です。
売却・購入の際に、どういった税金や保険があるのかを知っておく必要があります。
項目 | 内容 | ポイント・注意点 |
---|---|---|
譲渡所得税・住民税 | 売却で利益が出た場合に課税される | 「3,000万円特別控除」や「買換え特例」で軽減できるケースが多い |
印紙税 | 売買契約書に貼る収入印紙代 | 売却時・購入時の双方で必要。契約金額により数千円〜数万円程度 |
登録免許税 | 新居の所有権移転登記にかかる税金 | 住宅ローンを借りる場合は抵当権設定登記の費用も発生 |
不動産取得税 | 購入時にかかる都道府県税 | 新築や中古住宅でも一定の条件で軽減措置あり |
団体信用生命保険(団信) | 住宅ローン利用時に加入が原則 | 借入者に万一のことがあった場合、残債がゼロになる |
火災保険・地震保険 | 新居に合わせて加入 | ローン契約の条件に含まれることも多い。見積もり比較がおすすめ |
売却して譲渡益が出た場合は、譲渡税を支払う必要がありますが、マイホームの場合は、条件によって、3,000万円の特別控除や買い替え特例を利用することができます。
詳しくは、国税庁のNo.3302 マイホームを売ったときの特例、No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例で確認してください。
引き渡しの時期を調整する方法は?
マンションを売るタイミングと入居するタイミングを合わせるのは、多くの方が不安に感じるポイントです。
引き渡し時期の調整方法としては、売却契約の際に2週間程度の引き渡し猶予を設ける、買い先行で新居を確保してから売却するといった方法があります。
特に、同時進行の場合は、買主の住宅ローンの審査の遅れなどによって、引き渡し時期が遅れるケースがあるので注意が必要です。
不動産会社や金融機関と早めに相談しておくことで、引っ越しの二重負担や仮住まいの必要を減らすことができるでしょう。
まとめ
今回は、マンションの住み替えについて、住み替えを行うための方法や費用、住宅ローンを利用する際の注意点などについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
マンションの住み替えは、人生の中でも大きな決断のひとつです。
売却と購入の順番をどうするか、どのくらい費用がかかるのか、住宅ローンはどう組めばよいのかなど、考えるべきことは多岐にわたります。
そのため、不安や疑問を抱くのは当然のことと言えます。
しかし、ポイントを整理し、専門家に相談しながら一つひとつ確認していけば、住み替えは決して難しいものではありません。
むしろ、ライフスタイルに合った住まいを手に入れる大きなチャンスです。
十分な準備期間を確保し、信頼できる不動産会社や専門家と二人三脚でマンションの住み替えを進めましょう。
本記事で紹介した方法や注意点を参考に、住み替えの流れを理解し、無理のない計画を立て、最適な住まいを見つけていただければと思います。

<保有資格>
司法書士
宅地建物取引士
貸金業取扱主任者 /
24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。