「地方移住はやめとけ」は本当?田舎暮らしを成功させる5つのステップ

不動産を知りたい

「地方移住はなぜやめておくべきといわれているの?」「田舎暮らしに憧れはあるけど、何から始めたらいいか分からない」など、都会を離れて暮らす地方移住に興味を抱くと同時に不安を感じている方もおられるかと思います。

国土交通省が2023年3月に実施した調査によると、東京圏に在住する20歳代の44.8%の人が地方移住に関心があると答えました。また、東京の移住相談件数は増加しており、地方移住を検討している人は増加傾向にあります。特に、相談者の年齢は40歳代以下の人が全体の7割を占めており、移住に伴う仕事としては会社員のほかに、農業や自営業を希望する人が多い状況です。

結論から申し上げると、地方移住がやめておけと言われている理由は、大都市と比較して生活の利便性が低くなる傾向があるからです。スーパーマーケットや病院、教育施設など日常生活で利用する施設が少ないことで戸惑うことやストレスを感じることもあるかもしれません。しかし、事前準備や情報収集を行うことで納得のいく地方移住を実現することも可能です。

今回の記事では、地方移住する際に準備しておくべきことや成功させるためのステップを解説していきます。将来地方移住することを検討している方や田舎暮らしに興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

地方移住はやめておけといわれている理由

地方移住はやめておけといわれているのは、大都市から地方に移住する際に生活環境の変化に適応することが難しいと感じる人が多いからです。都会から地方に移り住む場合は、これまでの生活スタイルや暮らしを見直す必要があり、移住した後の実際の暮らしを事前に把握しておくことが重要です。

地方に移住すると、公共交通機関が少ないことや娯楽施設が都会と比較して少ないことなど、移住生活のデメリットを感じる人もおられるでしょう。また、地方では人間関係が都会よりも親密になることが多く、周辺地域に住む人とうまく関われるかを不安に思うこともあるかもしれません。

しかし、自然が豊かな場所で落ち着いて暮らせることや満員電車に乗らずに通勤できることなど、地方移住することのメリットを感じる人も多くいます。実際に移住生活を始めた段階で移住前のイメージと違っていたなどのギャップをなくすためにも、事前準備や情報収集を行っておくことが重要です。ここでは、地方移住する際に変化を感じやすい場面について解説していきます。

ライフスタイルの変化に不安を感じる人が多い

地方移住する場合は、これまでの働き方やライフスタイルが変化する可能性が高くなります。

内閣官房のまち・ひと・しごと創生本部事務局が令和2年9月に公表した東京圏、地方での暮らしや移住及び地方への関心に関する意識調査によると、地方移住を妨げる要因として求めている業種や職種の仕事が見つからないことが全体の半数以上を占めています。

現在勤務している会社を辞めずに地方移住を検討する場合は、リモート勤務が可能かを職場に相談する必要があります。フルリモートの勤務でオフィスに出社する必要がない方は、インターネット回線が整う環境であれば場所を選ばずに働くことができます。デザイナーやプログラマー、フリーランスなどでリモートワーク中心の生活を送っている方は、地方移住の際に現在の仕事を続けることも可能です。

地方移住を検討している方は、移住先にある求人に応募するなど収入源をあらかじめ確保しておくことが重要です。また、移住をきっかけに転職や独立、農業などの仕事に再就職する方もおられるでしょう。実際に地方の暮らしが始まる前に、ご自身の仕事環境を整えることが不安の解消に繋がります。

移住前に情報収集と現地訪問を行うことでリスクを回避する

地方移住を検討する場合は、実際に移住する前に現地の情報を集めておくことが大切です。

都会と地方では生活スタイルに違いがあるため、知識や情報を取り入れずに移住するとご自身の希望と合わない移住地を選んでしまう場合もあります。住んでみたいと思う地域がある方は、自治体ごとに設置された移住相談窓口に問い合わせることをおすすめします。

インターネットや相談窓口などを利用して情報収集した後は、実際に移住を検討している地域を訪問しましょう。移住先の気候風土や特徴など、土地に足を運んで初めて発見できることが多く、実際に地域に暮らす人の意見を聞くことができるのもメリットです。

地方移住の準備を進めたい方は、一般社団法人 移住・交流推進機構が運営するニッポン移住・交流ナビを使って自治体ごとの支援制度や地域の魅力、仕事を発見することも可能です。日本全国で利用できるAIチャットサービスや東京にお住まいの方向けの地方移住が相談できる施設も活用しましょう。

地方移住する際に知っておきたい5つのこと

地方移住を検討する場合は、ご自身の生活環境と移住先の暮らしがマッチするかを事前に確かめておくことが大切です。住居や交通手段、人間関係など都会と地方の異なる特徴を把握することで、実際の移住後の暮らしをイメージすることができます。ここでは、地方移住する際に知っておくべき5つのことを詳しく解説していきます。

移動手段は車になることが多い

地方では、公共交通機関が少ないことから主な移動手段は車になることが多いです。自宅から会社への通勤や休日の買い物などで車を利用するため、自家用車を所有する必要があります。

車を持つことのメリットとしては、バスや電車と比較して時間や場所の制限がなく自由に移動できることが挙げられます。また、重い荷物や複数の人を運ぶことができるので、日常生活の利便性が向上します。

一方で、車を所有すると購入費用や維持費が発生します。現在車を持っていない方は車を購入する必要があるので、新車や中古車、車種などを移住後の暮らしに合わせて購入することをおすすめします。また、通勤や日常生活の運転において交通渋滞に巻き込まれるケースもあるので、時間に余裕を持って出かけることが重要です。

転職が必要になる場合がある

地方移住する際は、在職中の会社から転職することが必要になる場合があります。

現在の仕事上、リモートワークで働くことが難しい方や勤務場所に制限がある方は、地方移住と同時に新しい仕事を探す必要があります。移住先を考える上でも収入源を確保することは重要になるので、あらかじめ転職活動をしておくことをおすすめします。

地方ならではの仕事に従事したい場合は、都市地域から過疎地域に住民票を移すことを条件にした地域協力活動を行う地域おこし協力隊に参加することも選択肢の一つです。農林水産業や住民支援に従事することができ、任期終了後には起業や就職に向けた支援もあります。

参考:地域おこし協力隊(総務省)

豊かな自然の中で生活できる

都会から地方に移住すると、豊かな自然が目の前にある環境で生活することができます。ビル群や道路が少ないことから都市部よりも空気が澄んでおり、植物や生物を身近に感じながら過ごせるでしょう。

また、キャンプや釣りなどの自然と触れ合うアクティビティを気軽に体験できるのもメリットの一つです。休日を自然の中でゆったりと過ごすことや子供たちと一緒に遊ぶことができるため、海や山、川でアウトドアスポーツやレジャーを楽しむことができます。

さらに、農業や漁業が発展している地域では、新鮮な野菜や魚が食べられることも魅力の一つです。家の周辺に自由に使える土地がある場合は、農作物を育てて食べることもできます。地方ならではの特産物を育てることや味わうことができるので、都会よりも自然と触れ合う機会が多いといえるでしょう。

人との関わり合いが密接になる

地方移住すると、移住先の地域住民との関わり合いが密接になります。

都会と比べると地方では、地域のコミュニティに参加する機会が多くあります。地域住民で構成される自治体の活動や、地方ならではの祭りやイベントで人間関係を築くことができるので、人とのコミュニケーションを取ることが好きな方にとって適した環境といえます。

また、移住先の近所の人々と交流を深めることや育てた作物を交換することもできるので、日常生活を送る中で人との関わり合いを持つことが出来ます。都会の暮らしの希薄な人間関係に寂しさを感じている方は、地方移住することで地域住民と人間関係を深めるきっかけにもなるでしょう。

実際に都会と地方の暮らしを比較する場合は、ご自身の希望する住環境に合わせて選択する必要があります。
移住先を検討する際は、地域の人口やコミュニティ、特性などをあらかじめ調べておくことも重要です。

生活インフラが整っていない地域の可能性がある

衣食住や交通機関、医療などの日常生活を送る上で欠かせないサービスのことを生活インフラといい、地方での暮らしに必要なインフラが整っていることも住まい選びの条件の一つになります。

地方移住先によっては、生活インフラが整っていない地域の場合も考えられます。都会と比較すると、地方は交通機関や病院、教育施設などの数が少ない傾向にあり、ICT教育の充実やコンパクトなまちづくりを推進する必要があります。

テレワークの仕事に従事している方の場合は、情報通信基盤が整っていることが条件として挙げられる他、老朽化が進む電気・ガス・水道等のインフラを整備することが求められます。

今後高齢化社会が進む日本においては、どの地域でも安全で快適に過ごせる環境を作ることが求められています。医療の遠隔診療やオンライン教育、ネット通販の普及などを地域コミュニティと連携しながら行う必要があることを覚えておきましょう。

参考: 地方でも安心して暮らし続けるための基礎的要素について(国土交通省)

地方移住を成功させるための5つのステップ

地方移住を検討している人が移住生活を始めるまでには、いくつかの段階を踏む必要があります。ここでは、地方移住を成功させるための5つのステップを紹介しますが、人や地域によって準備期間や進める順番は異なります。地方移住をスタートするまでの流れの一例として、以下の図をご覧ください。

地方移住を始めるまでの大まかな流れとして、本記事ではSTEP1~STEP5の順番でご紹介します。

まずは、地方移住の目的や理由を明らかにして、NPOなどの移住を応援する団体に移住先を相談します。移住候補先が決まったら、現地訪問して移住経験者の意見を取り入れましょう。国や自治体が提供する支援制度の中から利用できるものを選び、住環境を整えたら最後に地方移住がスタートする流れです。ここでは、地方移住の5つの流れについて解説していきます。

地方移住の目的を明確化する

地方移住を成功させるための最初のステップは、移住の目的を明確にすることです。「自然が豊かな環境で過ごしたい」「現在の働き方や暮らし方を変えたい」などの理由から、ご自身に合った移住先を選択することが大切です。

また、地方移住を検討する際は現在の家族構成や仕事、生活環境にも目を向ける必要があります。都会から地方に移住することで、どんな暮らしがしたいかを家族やパートナーと相談しながら移住の目的や条件を定めましょう。

移住を機に独立や起業を考えている方や農業、漁業に取り組みたい方など目的によっても最適な移住先は異なります。都会と地方を行き来する場合は往復時間をあらかじめ計算しておくなど、移住後に後悔しないためにも地域の特徴や立地など、詳細まで調べておく必要があるでしょう。

参考: 就業者の地方移住に関する調査報告書(パーソル総合研究所)

地方移住を応援する団体に相談する

地方移住の目的を明確に定めた上で次に行うべきステップは、移住を応援する団体に相談することです。

実際に地方移住を進めるにあたって、個人だけで完結させるのは簡単なことではありません。移住を検討している地域の特徴や仕事、生活環境について専門家に相談することをおすすめします。

認定NPO法人のふるさと回帰支援センターでは、地方移住に関する情報を提供することや各地域の担当相談員からサポートを受けることができます。

地方移住を検討する中で、移住先をどこにしようか悩んでいる方や情報収集したい方は積極的に利用することをおすすめします。また、東京都の移住相談センターに出向くのが難しい場合は、オンライン相談の予約を利用することが可能です。

移住先の暮らしを体験する

移住候補地が決定した後は、現地を訪問して実際の生活を体験しておくことをおすすめします。移住希望者向けに準備されている宿泊プランや体験住宅が利用できるので、戸建住宅や集合住宅からご自身に合ったプランを選択することが大切です。

日本全国でお試し移住の体験型プログラムが実施されていますが、ここでは一般社団法人 移住・交流推進機構が紹介する5つの市の取り組みをご紹介します。参加費無料で宿泊体験ができるプランや現地の仕事を体験できるプランが用意されているので、詳細はまずは行ってみよう!お試し移住体験プログラム5選!をご覧ください。

実際に地方移住する前に地域の人と交流を深めることで、人間関係を築くことや地域の特徴を把握することができます。地方移住をきっかけに転職を考えている方は、移住先の仕事を体験することで実際の暮らしのイメージが掴めるでしょう。ご自身のライフプランに合った地方移住を実現するためにも、移住先の暮らしを事前に体験しておくことは重要です。

国や自治体が提供する支援制度を利用する

地方移住の候補地から移住先を決定する際は、国や自治体の支援制度が利用できる地域を優先的に検討しましょう。

国が推進する地方創生の取り組みの一つとして、地方での起業や都会からのUIJターンによる移住を応援する移住支援金が支給されています。移住支援金の対象者に関しては、内閣官房・内閣府総合サイトの地方創生移住支援事業の概要をご覧ください。

国の移住支援事業では、東京圏から地方へ移住する人のみを支援の対象としていますが、事業を実施する各都道府県によって対象者や支援金受給額などの条件は異なります。

宮崎県を例に挙げると、令和6年度の移住支援金事業では東京圏以外にも名古屋圏、大阪圏並びに福岡県から宮崎県内の市町村に移住する人を対象者としています。移住支援金の支給の可否は実施主体によって異なるため、移住を予定している市町村に確認しておくことが重要です。

また、国が地方公共団体の取り組みを支援する移住支援金以外にも、各都道府県や自治体が独自に行う支援事業があります。収入源や住宅を確保する上でも役に立つ事業を実施する3つの自治体をここでは紹介します。

①北海道帯広市
北海道の十勝地方に位置する帯広市は、UIJターン新規就業支援事業を実施しています。東京圏からの移住を促進するための移住支援金を単身で60万円、複数人世帯で100万円を支給しており、令和6年度よりテレワーク移住が対象に追加されました。

帯広市は、短期間の移住体験を希望する方向けに情報提供する「ちょっと暮らし」施設や滞在施設を紹介しており、移住体験や地域の生活をサポートする独自の支援事業を展開しています。

また、移住支援金対象求人就業マッチングサイトでは、北海道内に地方移住する方向けの支援金対象となる求人を紹介しています。テレワーク移住や起業、独立をきっかけにした地方移住でも支援金が支給される場合もあるので、詳細は「移住支援金」を活用して、北海道で働きませんか?をご覧ください。

②富山県高岡市
富山県の北西部に位置する高岡市では、東京圏から高岡市に移住して就業や起業する人向けの高岡市移住支援金を支給しています。

就業や起業、テレワークの場合に合わせて支給の要件が異なりますが、いずれも支援金申請後5年以上継続して移住する意思があることが条件とされています。

また、東京圏外の地域から移住する人向けのたかおかウェルカム移住支援金を支給しており、18歳未満を含む世帯に30万円、2人以上で20万円、単身に10万円の交付を行っています。

さらに、戸建住宅の購入や起業、創業したい人を支援するサービスが提供されているなど、移住者向けの支援が充実しています。高岡市が行う支援制度の詳細については、高岡市移住促進サイトをご覧ください。

③大分県大分市
大分県の県庁所在地に位置する大分市では、大分市移住支援事業に係る支援金を支給しています。東京圏からの移住の場合は単身で60万円、複数人世帯で100万円が支給されますが、東京圏以外からの移住でも複数人世帯で30万円を受け取ることが出来ます。

また、大分市移住者応援給付事業給付金の事業も実施されており、住宅の取得をし、移住または転居する世帯に向けた給付金を支給しています。大分市が行う支援事業の詳細についてご覧になりたい方は、県外から大分市に移住する方を応援しますをご覧ください。

地方移住者向けの移住支援金制度は、各都道府県や地方自治体によって対象者の条件が異なります。移住先を検討する段階で、現在お住まいの地域が支援の対象であるかを確認しておくことが大切です。

また、住居購入のための支援金や子育てサポートのための補助金など、自治体が独自で定めた支援金制度も多くあるので、詳細については全国自治体支援制度検索から気になる地域を調べてみることをおすすめします。

※1UIJとは…用語(東京ハローワーク)

移住生活をスタートする

地方移住の最後のステップは、実際に移住生活を始めることです。

移住を検討する地域の現地訪問や宿泊、仕事などの体験を通してご自身の生活スタイルと移住先の生活がマッチするかを判断しましょう。地域コミュニティや生活インフラ、交通機関などのあらゆる面を考慮した上で後悔のない住まいを選択することが大切です。

実際の暮らしを始めるまでにしておくべきことは、地域住民の方に挨拶することや通勤・通学のルートを把握することが挙げられます。また、移住をきっかけに家や車を購入する場合は、事前に移住生活を開始するまでのスケジュールを立てて実行する必要があるでしょう。

移住生活が始まった後も安全で快適な生活を送るためにも、上記に示した5つの流れを実践することをおすすめします。都会から生まれ育った街に戻り就職するUターン転職の場合は、あらかじめ地域の特性を理解している場合もあります。ライフステージの変化や起業、独立など地方移住する際の個人の状況によっても地方移住の条件は異なるので、状況に応じて暮らしの優先順位を設定しましょう。

最後に

近年では、東京圏をはじめとした都会から地方に移住したい人の割合は増加傾向にあります。一方で、現実的には東京一極集中が進んでおり、特に若者は地方から都会に人口が流出している現状です。今後少子高齢化が予想される日本においては、国や自治体が推し進める地方創生の取り組みとしても地方移住をサポートする必要があるでしょう。

地方移住を支援する事業は多岐に渡り、東京圏内から地方に移住する方以外にも支援の対象者は幅広く設けられています。自治体によって内容が異なるものが多いので、移住を検討している方は利用できる支援制度をあらかじめ確認しておくことが大切です。

都会から地方に移住すると、生活環境が大きく変化することで不安やストレスを感じる可能性もあります。しかしながら、満員電車に乗らなくてよいことや豊かな自然に囲まれて生活できるなどのメリットも存在します。地方移住を検討している方は、事前に地方の暮らしの特徴を理解した上でご自身に合ったライフプランを立てることが大切です。

【監修者】大石 裕樹

【監修者】大石 裕樹

<保有資格> 司法書士 宅地建物取引主任者 貸金業取扱主任者 / 24歳で司法書士試験合格し、27歳で司法書士として起業。4年で日本一の拠点数を達成する。現在は、不動産の売主と買主を直接つなぐプラットフォーム「スマトリ」を立ち上げ、不動産業界の透明性を高め、すべての人にとって最適な不動産売買を安心安全に実現するため奮闘中。

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